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米国での投球ヒジ故障の原因は「少年時代の投げ過ぎ」

出村義和

 ダルビッシュ有(レンジャーズ)が現地13日、右ヒジ炎症のため15日間のDL(故障者リスト)に入った。精密検査の結果を待たなければわからないが、仮に田中将大(ヤンキース)のように靭帯に損傷が見つかり、それが大きい場合は長期的な戦線離脱も考えられる。田中のようにリハビリで完治を目指せる程度ならいいが、最悪の事態は正常な靭帯を移植する通称トミー・ジョン手術に回復を委ねることになる。この場合、一般的には復帰までに12か月から16か月かかる。田中も一時はこの手術の可能性も取沙汰されたが、それを回避したのは症状がそこまで深刻ではないとの診断が下されたことに加えて、この復帰までの期間の長さが球団に手術を躊躇させたことは想像がつく。ポストシーズン進出を狙うチームがエースを失うことは、ギブアップすることに等しい。ましてや、ヤンキースの田中への依存度は登板のたびに増していた。

 この2人に限らず、今年のメジャーには投球ヒジを故障する投手が続出した。しかも、その多くが若きエースと呼ばれるような25歳前後の有力投手たちだ。そして、そのほとんどがトミー・ジョン手術を受ける事態になった。

 こうした状況に、バド・セリグ・コミッショナーが「実態を調査するための専門委員会を立ち上げる」ことを明言するなど、深刻化してきた『投球ヒジ問題』の解決に向けて具体的な動きを始めた。

 また、一方で投手の立場としてダルビッシュがオールスターゲーム前日の会見で、故障防止対策としてトレーニング方法の改善や、公式球の品質向上などを提言した。中でも注目されたのが、現在メジャー全球団が行っている5人の投手による先発ローテーションを6人にして、中4日から中5日にするという発言だ。「(現状の登板間隔は)絶対に短い。最低でも5日間開ければ、靭帯の炎症はクリーンになる」と、力説したのである。

 こうした一連の発言は日本で大々的に取り上げられたが、現地メディアでは有力紙ニューヨーク・タイムス紙が報じたものの、それは例外的な扱いで、報道の多くは今シーズン限りで引退を表明しているデレク・ジーター(ヤンキース)の『最後のオールスターゲーム』に費やされ、ダルビッシュの発言は論争に発展するようなことはなかった。

 7月半ば、現地に飛んだ。現場はこういう事態をどのように捉え、またダルビッシュの発言に対してどう思っているかを取材した。

 選手会のトップ、トニー・クラーク専務理事はいう。

 「組織としても深刻に受け止めている。メジャーを背負って立つような投手たちが1年以上も戦列を離れるということは、メジャー全体の大きな損失。今後はより注意深く見守っていく」

 22歳のときにトミー・ジョン手術を受けた経験を持つという、C・J・ウイルソン(エンジェルス)は次のように語る。

 「自分の場合も、他の投手たちの主なる原因は少年時代の投げ過ぎ。 ・・・続きを読む
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筆者

出村義和

出村義和(でむら・よしかず) ジャーナリスト

ジャーナリスト。1950年、東京生まれ。法政大学社会学部、ユタ州立大学ジャーナリズム科卒。ベースボールマガジン社でアメリカ総局特派員、週刊ベースボール編集長などを務め、86年からフリー。ニューヨークを拠点に、スポーツから政治、ビジネスまで幅広い範囲をカバー。2005年に帰国後、新聞、雑誌などに執筆する一方で、スカパー!「MLBライブ」の解説を務め、09年からはJスポーツでMLBの解説者となる。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』『メジャーリーガーズ』など。

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