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ノーベル文学賞発表日の書店のそわそわ

白井恵美子 紀伊國屋書店員

 9月に入るとソワソワし始める事がある。それは毎年10月2週目木曜日にノーベル文学賞が発表されるからだ。発表間近になると、獲った時の事を考え、彼の著作全てを発注したりテレビ取材依頼が入ったりと、嫌でも意識せずにはいられなくなってくる。

 今年も日本を代表する作家、誰もが知る村上春樹が候補に入り、有力と言われていた。

 もしも村上春樹がノーベル賞を獲ったらどうなるだろう。それは書店のみならず、日本中がお祭り騒ぎになるに違いない。今までに、日本人作家が獲ったのは、1968年川端康成、1994年大江健三郎なのだが、私は受賞当時の書店の裏側を知らない。1994年当時、文学を担当していたという上司に聞いてみると、一日で大江健三郎の著作は全て売り切れたという。出版不況と言われる現在、発注に忙しく補充しても補充しても品切れるその時をぜひとも体験してみたかった。

 今回受賞したのはフランス人作家のパトリック・モディアノ。外国文学ということもあり、普段敬遠されがちなのだが、この時ばかりはやはり問い合わせも多く、一時品切れを起こすほどだった。

 よくある問い合わせで、ノーベル賞を

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