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伝説の継承者が築いた、33回優勝の白鵬の新伝説

優勝回数以外でもほとんどが歴代トップの記録を保持する特筆すべき存在

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

稀勢の里を下し、33度目の優勝を果たした白鵬(右)=2015年1月23日、東京・両国国技館稀勢の里を下し、33度目の優勝を果たした白鵬(右)=2015年1月23日、東京・両国国技館
 白鵬が初土俵を踏んだ2001年春場所以来、14年ぶりの15日間満員御礼の大人気の中で、白鵬が史上最多の33回目の優勝を、13日目で決め、15戦全勝で締めた。2010年に話題になった連勝記録への挑戦だけを見果てぬ夢として、江戸時代以来のすべての記録を覆す勢いで勝ち続けている。昭和の戦前までは年2~4場所、昭和初期までは10~11日興行、大正以前は土俵の大きさが2尺(60センチ)小さい、明治後期までは屋外興行、その明治後期までは個人優勝の表彰制度自体もなかった、など現在と比較しようがない前提もあるが、すでに白鵬が江戸時代以来史上1位を確定させている記録が多数出現している。

 やや長くなるが、その主な1位の記録を、(1)全盛期の強さ、(2)キャリア(幕内~横綱在位)通じての強さ、(3)下位に負けない安定感、(4)他の力士と実力差、で棚おろししてみる。(以下注釈)※:昭和戦前までの東京場所のみ年2場所時代の記録。※※:大正時代以前の「引き分け」、現在の取り直しにあたる「預かり」、現在の不戦勝も含まれる「休み」等をはさんだ、東京場所のみ年2場所時代の記録。

 【(1)短期間の強さ】
・年間最多86勝を2回:2位朝青龍84勝
・連続6場所最多88勝:2位北の湖85勝
・連続優勝7場所:1位タイ朝青龍(同率を優勝と数えると雷電※※の9場所あり)
・横綱での連勝63で1位:2位千代の富士53連勝
・幕内13勝以上連続9場所:2位北の湖と白鵬8場所
・幕内14勝以上連続6場所:2位玉の海と千代の富士4場所

 【(2)キャリア通じての強さ】
・優勝33回:2位大鵬32回
・年間最多勝8回:2位北の湖7回
・年間最多勝8回連続:2位北の湖、大鵬、朝青龍5年連続
・年間80勝以上4回:2位北の湖、貴乃花2回

 【(3)下位に負けない安定感】
・幕内連続二けた勝利48場所:2位北の湖37場所
・初日から8連勝での勝ち越し33場所:2位千代の富士25場所
・初日から8連勝での勝ち越し連続10場所:2位も白鵬7場所、3位玉の海6場所
・金星無配給連続10場所:2位大鵬9場所(白鵬は7場所連続、6場所連続も別途記録)
・年6場所時代での45場所で金星配給9、の金星配給率0.200:大鵬58場所中28で0.483、千代の富士59場所中29で0.492(引退後確定だが史上1位確実のペース)

 【(4)他の力士との実力差】
・全勝優勝11回:2位大鵬8回。
・40連勝以上2回(63、43):1位タイに太刀山※※(56、43)、雷電※※(44、43)、谷風※※(63、43)。
・30連勝以上の回数4回:1位タイに大鵬、雷電※※
・13日目での優勝決定通算6回:2位千代の富士4回

 以上がすべて、江戸時代以来で史上1位である。白鵬は成績を大きく落とすこともなく横綱を8年弱務めてきたが、残す1位でない成績の多くは、あと2年強、通算10年を務めることによって追い越す可能性を残すものだけになったと言っていい。

 【(2)キャリア通じての強さ】
・横綱通算606勝で4位:1位北の湖670勝
・幕内通算801勝で4位:1位魁皇879勝
・通算895勝で5位:1位魁皇1047勝
・横綱在位45場所で8位:1位北の湖63場所
・横綱皆勤45場所で3位タイ:1位北の湖51場所
・横綱通算二けた勝利45場所で2位:1位千代の富士48場所

 【(4)下位に負けない安定感】
・通算連続勝ち越し48場所で3位:1位武蔵丸55場所
・幕内連続勝ち越し48場所で3位:1位北の湖50場所

 加えて、白鵬が歴史上特筆すべきことがあと2点ある。一つは年6場所×15日で「4日に1日は本場所」の状態にあって横綱として皆勤し、上記の成績を積み上げてきたことである。

 【(2)キャリア通じての強さ】
・横綱連続出場675回(45場所):2位は北の湖653回(43場所)
・幕内12勝以上連続22場所:2位も白鵬16場所(継続中)、3位貴乃花13場所

 もう一つは、優勝を決めてからも気を緩めることなく千秋楽まで取り切ってきたことである。記録としては

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