敗北か、鬼神の所業か
2015年03月26日
羽生結弦、日本人初の世界選手権連覇なるか?
それが今大会一番の眼目ということになるのだろう。
しかし、今シーズンの彼にもし連覇などできてしまったら、ほぼ奇跡、といっていい。
筆者は現在の羽生の練習状況、体調、ケガの様子について、報道されている以上のことは知らない。右足首の捻挫は完治しているわけでなく、高難度のジャンプが軽々跳べる状態ではない。その程度の情報しか持っていない。
それはもちろん、彼がオリンピックチャンピオンだから。
既に書いているように、五輪を制して次のシーズン、グランプリファイナルも世界選手権も優勝した選手など、いまだかつて存在しない。
今シーズンを見れば、チャンピオンのみならず銀銅のメダリストたちさえ、引退せずともまるまる休養を取ったり、シーズンの一部を休んだりしている。
羽生より若い女子金メダリストのソトニコワ(ロシア)も、今季は一戦も出場しなかった。男子銅メダリストのデニス・テン(カザフスタン)は、グランプリシリーズから出場していたものの、前半はまったくといっていいほどエンジンがかからなかった。
メダルに届かなかった選手であっても、たとえば団体戦で脚光をあびたロシアのユリア・リプニツカヤなど、世界選手権代表を逃すほどの不調ぶりだ。
今シーズンを通して奮闘をしているのは、ソチ代表の座を逃したエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)、村上大介、セルゲイ・ボロノフ(ロシア)など、2014年に悔しい思いをした選手ばかり。やはり4年に一度の大きなシーズンに照準を合わせられた選手が、そのままのテンションで翌シーズンも結果を出すなど、難し過ぎるのだろう。
さしもの羽生結弦であっても、やはり今シーズンはいっぱいいっぱいだったのだと思う。
かつて経験したことのない、チャンピオンとしてのハードスケジュール。どこに行っても人々の視線にさらされ続けた夏。通常の練習もままならなければ、ケガの療養など、身体のメンテナンスをしているひまもない。
五輪チャンピオンという最大の目標を達成して、そこで待っていたのがこんな毎日だということに、彼はずいぶん戸惑ってしまったという。
それでも、立ち止まることなく「勝ち続けるチャンピオン」でいるために、自分を奮い立たせるため、シーズン前の彼は技術面で大きな目標設定をした。
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