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敗因は橋下疲れか、主役引退で迎える大阪カオス

弱かった市解体の理由と無理やりだった区割り案、避けられない維新の求心力低下

前田史郎 朝日新聞論説委員

 こんなさばさばした顔を見たのは初めてかもしれない。

 大阪都構想の住民投票で敗北が決まった5月17日夜、橋下徹大阪市長は吹っ切れたような笑顔で記者に向きあった。

 「市長任期まではやりますが、それ以降は政治家をやりません」

 きっぱりと、そして公約通り、政界引退を明言した。

住民投票の結果を受け、会見する自民党の(左から)柳本顕・大阪市議団幹事長、竹本直一・大阪府連会長、花谷充愉・大阪府議団幹事長(右端)=2015年5月17日、大阪市中央区拡大住民投票の結果を受け、会見する自民党の(左から)柳本顕・大阪市議団幹事長、竹本直一・大阪府連会長、花谷充愉・大阪府議団幹事長(右端)=2015年5月17日、大阪市中央区
 弁護士から大阪府知事に転身してから約7年。都構想は橋下氏が率いる大阪維新の会の看板政策だった。それが否決され、橋下氏が引退することで、政治勢力としての維新の求心力も衰えは避けられない。良くも悪くも、大阪にとってひとつの時代が幕を下ろす。

          ■

 橋下氏はなぜ負けたのか。二つの理由をあげたい。

 一つは、橋下氏のいう「二重行政の解消」は、大阪市を廃止しないと本当に実現できないことなのか。この問いに明確に答えられなかったことだ。

 司令塔を一本化し、府と市の職員がいっしょに仕事できる体制をつくれば、むだがなくなり、大阪市の力をもっと発揮できる。この理念には一定の説得力がある。しかしそれは市を5つの特別区に分断することが必要条件なのか。市の住民説明会でもそこが多くの人の抱いた疑問点だった。

 制度を変えてしまわなければ物事の根本は動かない。市長と知事が交代すればまた市と府で無意味な競い合いをする恐れがある――。橋下氏はそう説明したが、これでは市解体の理由として弱い。

 政令指定都市は教職員の任免や児童相談所の設置などが独自にできるうえ、財源の確保でも一部で府県並みの権限が認められる。市の廃止はこれらの「特権」を捨てることを意味し、しかも二度と戻れないのだ。

 大阪人は損得勘定に関してはことさら敏感だ。

 協定書で示された区割り案は東西南北を単純に線引きし、無理やりこしらえた組み合わせのようだった。オフィス街や繁華街が集中する「北区」と、官庁街がある「中央区」は大企業も多く、豊富な税収が見込める。その一方、中小零細企業が多い「湾岸区」や南部の「南区」は、産業生産総額で5分の1以下にとどまり、切り離された感じが否め ・・・続きを読む
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筆者

前田史郎

前田史郎(まえだ・しろう) 朝日新聞論説委員

1961年生まれ。神戸、広島支局、東京・大阪社会部で事件や行政、核問題、厚生省クラブなどを担当。社会部デスク、教育エディター、大阪・社会部長、同編集局長補佐、論説委員、編集委員、論説副主幹(大阪駐在)を経て18年4月から現職。気象予報士。著書に『核兵器廃絶への道』(共著)。

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