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スマートフォンの普及で変わるコミックス事情

画面が大きくなり、ストーリー性のある漫画が人気に

杉浦由美子 ノンフィクションライター

キンドルとiPadで英語版が販売されるコミック「いつもそばにいる」=2010年、NTTソルマーレ提供拡大キンドルとiPadで英語版が販売されるコミック「いつもそばにいる」=2010年、NTTソルマーレ提供
 日本における電子書籍の売り上げの8割はコミックスが占めている。矢野経済研究所によると、2013年度の電子書籍市場規模は850億円(前年度比19.7%)で、そのうち650億円がコミックスである。漢字が混ざる日本語が縦書きでずらりと並ぶ活字の本は、まだまだデジタル端末で通読するのはおっくうだが、漫画の場合はスマートフォンやタブレットの普及でとても読みやすくなっている。今回は電子書籍の普及が漫画にどう影響を及ぼすのか考えてみたい。前半では電子書籍の漫画の動向を言及し、後半ではこの電子書籍の普及が漫画家たちにどう影響していくのかをみてみたい。

 2014年の頃のことだ。ある若手の漫画編集者がこう話していた。

 「漫画好きの人は、紙のコミックスで買うのかと思っていたが、変わってきた。最初に紙のコミックスで発売して、数ヶ月後に電子書籍版をリリースするとしても、後者が出るまで買わないという読者もいる」

 なぜ、漫画好きの人たちが電子書籍を買うようになったのか。理由のひとつに、漫画好きほど、漫画の収納に苦悩するからである。人気がある漫画作品は連載が続き、何十巻も発行していく。完結していない作品の場合は既刊も手元に置いておきたい。国民的人気漫画『ONE PIECE』(集英社)は現在77巻がでていて、ファンはどうやってコミックスを収納しているのだろうか。

 『人生がときめく片付けの魔法』(サンマーク出版)の近藤麻理恵は、「ときめくものを残せ」と説くが、好きな漫画は全部ときめくのだ。結果的に部屋が漫画で占領されていく。ところが電子書籍で漫画を購入すればまったく場所をとらずに、ときめく漫画をいくらでも所有できるのだ。しかも通勤中も会社の昼休みも気軽に好きな作品を読み返すことができる。漫画好きほど電子書籍の利便性を感じるのは当然なのかもしれない。

 だが、冒頭の若い編集者が「漫画好きの人は、紙のコミックスで買うのかと思っていた」と話している。なぜ、そう考えられていたのか。それは数年前まで、電子書籍はガラケーで読むものだったからだ。2000年代後半、まだガラケーといわれる携帯電話が主流だった頃、電子書籍は二つ折りの携帯の小さな液晶画面で展開をしていた。売れるものは、ポルノ要素があるものばかりだった。特に、成人漫画(男性向けのポルノ的なコミック)はよく売れていた。

 成人漫画は、コンビニだと奥の18禁のコーナーに売られている。そこに女性は行くことはまずない。ところが携帯電話なら誰にも知られずに手軽にダウンロードして、成人漫画を読むことができる。そのため、今まで成人漫画を読んだことがない女性層が ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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