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ジャニーズコンサートは観るのでなく参戦するもの

映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の興行成績不振と日本人女性

杉浦由美子 ノンフィクションライター

玉の輿より自己実現

 今年公開された映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は全世界的に大ヒットした。公開2週間で全世界の興行成績が5億6900万ドルとも報じられる。イギリスのベストセラー小説の映画化だ。ヒロインは平凡で恋愛経験のない女子大学生。彼女は学生新聞の取材で、ハンサムでリッチな企業経営者と出会い、惹かれ合う。かつてのラブストーリーならば、理想の王子様がヒロインを素敵に変身させていくが、この映画はそうはいかない。彼にはサディスティックな性癖があり、自分と交際するなら、SMプレイを受け入れる契約をしろという。ヒロインは愛する男性の望みを叶えようとするが、縛られ、鞭で叩かれる仕打ちをどうしても受け入れられない。つまり、「玉の輿に乗り損ねた」という話だ。

 スムーズなシンデレラストーリーになっていかないのが、現代風な印象も受ける。映画は美しい映像やよくできた脚本から構築されていて、大ヒットして当然のクオリティだが、日本では興行成績がパッとしなかった。男性がヘリコプターを操縦してヒロインをデートに連れ出したり、高級車をポンとプレゼントしたりするエピソードが、日本人からみると「バブリーで時代遅れ」に見えたのではないかと分析されている。

 だが、私は、少し違う感想をもっている。ヒロインがシンデレラになり損ねたという物語が日本の女性からすると、魅力がなかったのように思えるのだ。なぜなら、もう、日本の女性には、玉の輿に乗りたいという願望を持たなくなっているからだ。10年ほど前に、少女漫画の編集者が「読者の欲望はかつてはひとりの王子様を捕まえることだった。それが現在は自分自身が人気者になったり活躍したりしたいと望むようになっている」と述べていたが、この傾向はさらに強まっている。

 人間は成熟すればするほど、物欲や性欲だけでは満たされなくなり、自分自身が行動し、自己実現を求めるようになるだろう。しかし、真面目に生活をしていれば、そうそう自己実現などは出来はしない。学生時代は地道に勉強しなくてはならないし、就職すれば自分の欲望よりも組織の利益を優先しなくてはならない。そういう自制した生活を送るためには、日常とは違う所で、自己実現の欲望を発散させることはプラスに働くだろう。その場所としてジャニーズのコンサートはあるように思える。

受け身の疑似恋愛ではなく自分自身が行動していく

 ジャニヲタたちの中で、最も行動的でお金に糸目をつけないのは、20歳前後の女性たちである。普段、爪に火をともすような生活をしながらも、コンサートがあれば、地方だろうと、海外だろうと飛んでいく。チケットにもいくらでもお金を ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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