メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

PKO駆けつけ警護で問われる「憲法」

安保法制の「国民守る」は、相手を「殺す」というリアリティ

辰濃哲郎

  一連の安保法制が成立したことによって、政府はいよいよ具体的な運用の準備に取り掛かってい

南スーダンで土砂をならして道路を整備する自衛隊員=2015年1月20日、ジュバ拡大南スーダンで土砂をならして道路を整備する自衛隊員=2015年1月20日、ジュバ
る。国連平和維持活動(PKO)に派遣される自衛隊の武器使用基準が緩和されたことを受けて、離れた場所で武装集団に襲われた日本のNPOや、他国の部隊などを助けに行くことができる「駆けつけ警護」が、南スーダンに展開するPKOで来春から実施される方針が固まったようだ。(9月24日付 朝日新聞朝刊1面)

  安倍晋三総理が昨年5月15日のスピーチで、このPKOの「駆けつけ警護」について触れた部分を紹介する。

  「一緒に平和構築のために汗を流している、自衛隊とともに汗を流している他国の部隊から救助してもらいたいと連絡を受けても、日本の自衛隊は彼らを見捨てるしかないのです。これが現実なのです。皆さんが、あるいは皆さんのお子さんやお孫さんたちがその場所にいるかもしれない。その命を守るべき責任を負っている私や日本政府は、本当に何もできないということでいいのでしょうか。内閣総理大臣である私は、いかなる事態にあっても、国民の命を守る責任があるはずです。そして、人々の幸せを願ってつくられた日本国憲法が、こうした事態にあって国民の命を守る責任を放棄せよと言っているとは私にはどうしても考えられません」

  安倍総理は、この短いフレーズの中で「守る」を3回も繰り返している。全文を読んでいくと、20回に及ぶ念の入れようだ。だが、この「国民の命と平和な暮らしを守る」ための武力行使は、少し想像力を働かせれば、交戦相手の命を奪うことにつながっていくことに気づくはずだ。「守る」というお題目の前に、駆けつけ警護の先にある「殺す」というおぞましい事実と、さらにその先にある「報復」によって「殺される」というリアリティが埋没してしまっている。

  PKOの現場で、どれだけの兵士が亡くなっているか、知っている人は少ないと思う。PKOが創設された1958年以来、今年8月末までに3395人にのぼる。多くは自動車事故などの事故と病死だが、うち875人(25%)が敵対行為、いわゆる戦闘などによって死亡している。とくに昨年までの3年間の戦闘などによる死者は、22人、36人、39人と増加傾向にある。

  なぜ彼らは死ななくてはならなかったのか。

  私が90年代に1カ月半にわたって中東のPKOを取材に行ったとき衝撃的だったのは、各国の派遣部隊の宿営地内には、必ず亡くなった兵士名が刻まれた慰霊碑があったことだ。国連レバノン暫定軍(UNIFIL)では、紛争地域を各国から派遣された部隊が地域ごとに展開して ・・・続きを読む
(残り:約1506文字/本文:約2624文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


関連記事

レコメンドシステムによる自動選択

筆者

辰濃哲郎

辰濃哲郎(たつの・てつろう) ノンフィクション作家

ノンフィクション作家。1957年生まれ。慶応大卒業後、朝日新聞社会部記者として事件や医療問題を手掛けた。2004年に退社。日本医師会の内幕を描いた『歪んだ権威』や、東日本大震災の被災地で計2か月取材した『「脇役」たちがつないだ震災医療』を出版。

辰濃哲郎の新着記事

もっと見る