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橋下氏、周囲は「お約束」の政界復帰

復帰には盤石な地盤が必要、「党内バトルは『ウイスキーの蒸留』」と橋下氏

前田史郎 朝日新聞論説委員

 政治家を引退する。そう明言したはずなのに、この生々しさはなんなのか。維新の党を離党した橋下徹大阪市長だ。「大阪組」の議員を引き連れ、新党の旗揚げを主導。自らは引退するのに、住民投票で廃案になった大阪都構想を再び公約に、大阪府知事、大阪市長のダブル選挙(11月22日投開票)を戦うという。背後には切羽詰まった事情も見え隠れする。

  9月15日夜、大阪市北区内のホテルで地域政党「大阪維新の会」の政治資金パーティーが開かれた。

  「橋下代表はちょっとのあいだ休憩します」

  壇上にあがった幹事長の松井一郎・大阪府知事はそう語った。そして続けた。

  「彼が政治に興味と関心を失っていれば、これだけ世間を大騒ぎさせるようなことばかりしないでしょう。彼も46歳、心臓は強いですが、足腰はラグビーやっていたころのようなわけにはいかない。だから少し休憩します。日本の政治の舞台に必ず必要な政治家です」

  満場の拍手が巻き起こった。

  この約1週間前には、安倍首相がテレビ番組で橋下氏の将来の国政進出について、「可能性はあるのではないか」と述べている。

  大阪都構想の住民投票があった5月17日以後、橋下氏は静かに12月の任期満了を待つのかと思われた。様子が変わり始めたのは、安倍首相と会った後の6月中旬。自らのツイッターに「維新の党は民主党とは一線を画すべき」と書き込み、徐々に表だった活動を再開した。

  最近の橋下氏は、引退の意思は変わらないとしつつ、進退に関する質問を不自然なほど嫌がる。

  9月3日、大阪市役所での記者会見。

  ――政界復帰はないのか。橋下さんが残るかどうかで新党に行くか迷っている人もいる。

 「ないです」

 ――参院選出馬に関して松井幹事長は否定はしていないが。

 「将来の僕の人生をなんで決めさせるんですか。自由にさせてよ、そんなの。放っといてください。僕の人生です」

 笑顔もまじえつつ、一蹴した。

 いずれかの段階の政界復帰は、周囲にとって期待ではなく「お約束」になりつつある。

          ■

報道陣に囲まれる、大阪市長選に大阪維新の会の公認候補として擁立されることになった吉村洋文衆院議員=2015年9月26日、大阪市中央区拡大報道陣に囲まれる、大阪市長選に大阪維新の会の公認候補として擁立されることになった吉村洋文衆院議員=2015年9月26日、大阪市中央区
 12月に橋下氏がいったん政界を引退しても、復帰するなら盤石な地盤を残しておく必要がある。城がなければ城主として戻れないからだ。

  今、橋下氏は大阪都構想をもう一度掲げ、11月の大阪府知事、大阪市長のダブル選挙に邁進する。自分の後任の市長候補に都構想の制度設計にも携わった衆院議員の吉村洋文氏(40)、知事には松井知事の再選をめざすことを決めた。

  たしかに5月の住民投票は反対が賛成を上回ったが、その差は0.8ポイントの僅差だった。もう一度、住民に問うてみたい気持ちはわからないではない。だが、意見の分かれるテーマで賛否を問い、意思決定するのが住民投票だ。負けは負けだ。再び選挙の争点に持ち出し、勝利すれば「仕切り直しだ」という構図の作り方はいさぎよくないようにみえる。

  過半数だった反対の民意をどう尊重するつもりか、まずは納得のいく説明が先だろう。

  住民投票前、橋下氏は「住民投票は一回限りだ」「これがラストチャンス」と言って支持を呼びかけた。

 9月3日の会見でその ・・・続きを読む
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筆者

前田史郎

前田史郎(まえだ・しろう) 朝日新聞論説委員

1961年生まれ。神戸、広島支局、東京・大阪社会部で事件や行政、核問題、厚生省クラブなどを担当。社会部デスク、教育エディター、大阪・社会部長、同編集局長補佐、論説委員、編集委員、論説副主幹(大阪駐在)を経て18年4月から現職。気象予報士。著書に『核兵器廃絶への道』(共著)。

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