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トップアスリートを支える就活支援アスナビ

交流会への参加者は過去最多、64団体91人の就職が示す実績と高い関心

増島みどり スポーツライター

  いつもなら、トップアスリートや指導者がセミナーを行うはずの場所が、この日ばかりは一部上場企業から中小企業まで様々な職種のサラリーマン、関係者200人ほどの熱気であふれていた。

  11月30日、東京・北区内にある、日本のトップスポーツの強化拠点「味の素ナショナル・トレーニングセンター」では、JOC(日本オリンピック委員会)が2010年にスタートした、トップアスリートの就活支援事業「アスナビ」の交流会が開かれていた。すでに選手を採用した企業、これからの採用を希望している企業の関係者、競技続行を願って何とか安定した職業に就いて欲しいと願う競技団体の担当者が、数カ所のグループワーキングに加わり、資料を見ながら互いに質問をする。大会議場と3つの部屋をフルに使ってのセッションは、予定時間を上回る過去最高の盛況ぶりであった。

  バスケットボール、ラグビーなどのように実業団競技が行われている競技とは違い、マイナー競技や個人競技の場合、海外遠征や試合出場が多く、職場の理解を得るのは極めて難しい。生活のため引退し、競技は諦めて一般企業に就職する選手も決して少なくない。JOCは、日本のスポーツを取り巻くこうした環境を分析した上で、選手を採用し職場をあげて支援してもらう枠組み作りに取り組んできた。

展示会ディスプレー製作・設営会社に入社し、金づちを手に作業する元サッカーJ2湘南の選手=2003年4月、埼玉県八潮市拡大展示会ディスプレー製作・設営会社に入社し、金づちを手に作業する元サッカーJ2湘南の選手=2003年4月、埼玉県八潮市
  オリンピックに出場するレベルにある選手の採用に興味を持つ企業と、なかなか就職先が決まらず、しかし競技だけではなく仕事でも貢献したいと願っている選手のお見合いをセッティングする、いわば仲人役が「アスナビ」である。お見合いといっても、ただ履歴書を交わすのではない。選手は、時に社長を前に自分の競技への取り組み、会社への貢献をどう行うか、映像を使うなどして、しっかりとプレゼンテーションしなければならない。面接だけではなく、ここまで求められるのは一般の大学生とは違い、ハードルは高い。しかし送り出す競技団体のほうは、「いつ、どこに、どんな形で出しても企業の評価を受けられるような選手育成も課題です」(日本陸上連盟)と、ただ競技力のアップだけにとどまらない指導にも力を注ぐ。

  ここまで5年で、64団体91人がこのシステムによるマッチングで就職し、競技を続け、メダリストも誕生している。交流会では、選手を採用し、実際にどんな好影響が職場にもたらされたか、社員の士気の向上や、競技がトップレベルの選手は業績もいい、といった営業の数字、競技との両立はどう行っているか、遠征先からFacebookを通じて全社員が常に成績を周知している、といった実例が報告された。

高額な支援とは違う、身の丈の支援の重要性

  「これまでにない関心を頂戴して有難い。交流会に参加して下さった方も、問い合わせの件数もこれまで以上に増えました」

  JOC強化部でこの事業を担当する鶴田政隆氏は手応えを ・・・続きを読む
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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

スポーツライター。1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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