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メジャー移籍で出遅れた前田健太

早くすべきだったポスティングの宣言、楽観的な見通しではない状況と気になる評価

出村義和

中日戦で先発し7回を無失点に抑えた広島の前田健太=2015年10月7日拡大中日戦で先発し7回を無失点に抑えた広島の前田健太=2015年10月7日
  当初、「契約規模は100億円か」と騒がれていた前田健太(27)のメジャー移籍がまだ決まらない。入札でメジャー球団に交渉権が与えられるポスティング制度での移籍。所属球団である広島カープの承認、日本野球機構への申請という流れの中で、すでに12月10日午前8時(アメリカ東部時間)から交渉が解禁されている。広島球団が設定した制度上最高限度額となる2000万ドルで応札した全ての球団に交渉権が与えられる。期間は30日間。従ってデッドラインは来年1月8日午後5時となる。クリスマス休暇やニューイヤーも挟むから、時間的な余裕があるとは言い難い。

 ポスティング制度で移籍したダルビッシュ有(レンジャーズ)、田中将大(ヤンキース)の2人の正式入団はともに1月に入ってからだったが、ダルビッシュは旧制度によるもので12月20日にはレンジャーズへの独占交渉権が与えられていた。また、田中の場合は、ポスティング制度そのものの見直しがあり、日米プロ野球機構による新協定の締結が手間取ったことによる影響だった。

 前田は渡米し、代理人と行動を共にしている。応札球団は明らかにされず、交渉はあくまで水面下で行われているので現在のところ進行状況は不明だが、当初の楽観的見通しからはかけ離れた状況になってきているとみていいだろう。

 メジャーのストーブリーグは活発だ。状況が刻々と変化する。今年は例年にも増してFA市場に大物が揃い、一方でメジャー球界は高騰を続けるテレビ放映権料、特に地元ローカル局との新規巨額契約で潤沢な補強資金を用意できる球団がどんどん増え、メジャー球界はテレビバブル的な様相を呈し、各球団の動きもいつも以上に素早い。

 そんな中で球団社長なども来日し、前田獲得の大本命といわれたダイヤモンドバックスがFAの目玉のひとりザック・グリンキーと投手で史上最高額となる6年2億600万ドルで獲得、早々に撤退した。また、有力視されていたジャイアンツはFAとトレードで2人の強力先発投手を手にした。当初は争奪戦に名乗りを上げるのは10球団に達するとの見方もあったが、名前の挙がった球団もチーム事情に見合った選手たちと次々に契約を交わし、前田はまるで置いてきぼりを食らった格好になっている。依然として有力とみられるのは岩隈久志と契約合意まで至りながら、最終のメディカルチェックで獲得を見合わせたドジャース。そして、日本進出に強い意欲を持つといわれるパドレス。だが、両球団ともいくつかの補強オプションを持っているとの情報もあり、不透明だ。

 こうみてくると、前田の出遅れ感は否めない。人材豊富なFA市場であることは事前にわかっていたはずだから、もう少し早くポスティングのアクションを始める必要があったのではないか。

 それと、もうひとつ。前田のメジャーにおける評価だ。スポーツ総合チャンネル局ESPN電子版を始め、現地メディアは早い時期から「先発3、4番手」と伝えていた。「将来のエース」と評価されていたダルビッシュ、田中とは大きく異なる点だ。前田は今年15勝8敗、防御率2.09で最多勝のタイトルを獲得、2度目の沢村賞にも選ばれた。しかし、メジャー移籍を狙うシーズンの比較をすると、 ・・・続きを読む
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筆者

出村義和

出村義和(でむら・よしかず) ジャーナリスト

ジャーナリスト。1950年、東京生まれ。法政大学社会学部、ユタ州立大学ジャーナリズム科卒。ベースボールマガジン社でアメリカ総局特派員、週刊ベースボール編集長などを務め、86年からフリー。ニューヨークを拠点に、スポーツから政治、ビジネスまで幅広い範囲をカバー。2005年に帰国後、新聞、雑誌などに執筆する一方で、スカパー!「MLBライブ」の解説を務め、09年からはJスポーツでMLBの解説者となる。著書に『英語で聞いてみるかベースボール』『メジャーリーガーズ』など。

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