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ラジオはこれからどうなっていくか

始まったAMのFM同時放送、あぶはち取らずで業界改革にもならないワイドFM

倉沢鉄也

TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送のAM民放局が始めたFM補完放送(ワイドFM)の特別番組の生放送に登場した左から赤江珠緒、大竹まこと、大谷ノブ彦=2015年12月7日、東京都内拡大TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送のAM民放局が始めたFM補完放送(ワイドFM)の特別番組の生放送に登場した左から赤江珠緒、大竹まこと、大谷ノブ彦=2015年12月7日、東京都内
 在京AM局のTBSラジオ&コミュニケーションズ、文化放送、ニッポン放送は、通常のAM放送と同じ番組を90~95MHzのFM放送波で同時に流す「ワイドFM」の本放送を昨年12月中にスタートした。すでに地方局ではいくつか始まっているところもあり、開始予定が明示されていない地域もある。周波数管理を担う総務省が実質的な期限に定める2020年3月までに、ほぼ全国で順次導入される。

 建前の目的は防災だ。「国土強靭化計画」すなわちインフラの耐震性強化のために行うという建て付けであり、テレビのデジタル化のような国際周波数政策への強制的対応ではない。拙稿「ラジオ業界は自己改革で商売替えの覚悟を」(2010年10月7日)でも述べた地上波アナログテレビ波の空地(V-Low帯)利用によるラジオ自体のデジタル波は事実上頓挫した中、アナログ波同士の追加措置だけが行われることになる。

 放送局の立場で見ると、この設備投資にはデジタル化によるサービスの多様化・充実という意味合いもなく、災害対応の同時放送の投資をしたところで増収が見込めるわけでもない。メディア視聴行動全体においてワイドFMがスマホやテレビや読書から一定の人口ボリュームを獲得できるわけでもなく、そもそもそれが実現できるなら、PCやスマホで受信できる同時放送サービスのradiko(ラジコ)や、地方FM局・コミュニティFM局各社のインターネットラジオをポータル化して聴けるサービス・ListenRadio(略称リスラジ)での独自収益性がすでに証明されているはずだ。インターネット配信はラジオリスナーの拡大・復活には寄与しているが、イコール増収の糧とはなっていない。

 政府の補助金が3~4割出るとはいえ、FM送信設備の残りの金額を負担するのはラジオ各局だ。地方AM局にはテレビとの一体運営局も多く比較的スムーズに移行できるが、ラジオ単体のAM局には厳しい負担となる。もちろん長年たてばその放送設備の更新も必要だ。同じ県域で同じような役割を果たしているテレビ事業とラジオ事業の経営規模の差は、大まかに言えば10倍~20倍だ。コミュニティFMの多くの例のようにFMの局内放送設備自体は比較的安価に設置できるが、事業拡大目的には何のメリットもない支出を強いられて、ただでも縮小しきったラジオビジネスの収益性をさらに圧迫している。それでも、リスナーを少しでも増やすポジティブなキャンペーンとしてラジオ業界がささやかに喜ぶべき事態ではある。

 100年に一度の災害時にまず聞こえてきてほしいNHKのラジオは、すでにAM(第一、第二)とFM両方の全国放送番組を運営している。そもそもNHKはラジオのデジタル化を実質的に拒んだ経緯もあり、 ・・・続きを読む
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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄住金総研研究主幹

日鉄住金総研(株)研究主幹。1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

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