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高齢者の福音となる可能性を秘める自動運転

自動車は脳にいい刺激、認知機能が低下したドライバーでも車で買い物に

和田秀樹 精神科医

運転手がハンドルから手を離し自動運転するテスト車=2014年5月27日、北海道帯広市拡大運転手がハンドルから手を離し自動運転するテスト車=2014年5月27日、北海道帯広市
 自動車の自動運転の技術が、ほとんど実用レベルにきているという。

 私の本業(何が本業かわからないと思っている人が多いようだが)が高齢者専門の精神科医なので、これはものすごく喜ばしいことだと思っている。

 もちろん、自動運転であれ、ある程度の運転補助ソフトであれ、高齢者、とくに認知機能の衰えた高齢者ドライバー自身の安全のためにも望ましいだろうし、歩行者などの安全性も高まるだろうが、私は、それ以上のことを期待している。

 高齢者が自分で動くことが脳の老化予防や認知症の進行予防に役立つと考えているからだ。

 一時期、長野県が医療費を大してかけないのに、長寿県に躍り出た際に、長野は山が多く、山道を歩くからだろうという解釈をする人も少なくなかった(ほかの理由は昆虫食だったが)。しかし、高齢者の間で自動車が普及して、自分で運転する人が増え、高齢者が山道を歩かなくなっても(昆虫食を昔ほど食べなくなっても)、長野県の平均寿命は延び続け、今や男女とも都道府県別では全国一の長寿県となっている。

 昔は都市部のほうが高齢者の平均寿命が長かったが、今は地方のほうが長いのも事実だ。

 アメリカに留学中、アメリカでは自分で運転できる限り、高齢者は自宅で生活し、それができなくなったら老人ホーム(リタイアメントハウスかナーシングホーム)に入ると聞いた。日本で見ていても、高齢者が自動車という道具の力を借りて、自分で行きたいところに移動できることが脳によい刺激になり、老化を遅らせている気がする。都会の高齢者のほうが、無料パスなどがあっても、バス停や駅に行くのでも大変なため、意外に家に閉じこもる人が多い。

 高齢者を専門として痛感したことは、認知症や骨折や脳こうそくの後遺症がない限り、高齢者でも知的機能や運動機能の実用機能は大して落ちないことだ。ところが使っていないときの落ち方は高齢者はひどい。若い人ならスキーで骨折して1カ月寝たきりの暮らしをしていても骨がつながればすぐ歩けるが、高齢者の場合は、インフルエンザなどで2週間くらい寝ているだけで、リハビリをしないと歩けなくなるなどということがざらにある。

 ということで高齢者は体や頭を使い続けることが大切なのだが、自動車があると外に出ることや買い物がおっくうでなくなることはとてもいい。

 ところが高齢ドライバー、認知症ドライバーが事故を起こすとことさらにマスコミ(地方の実情をしらない東京のマスコミ)が書き立て、それに乗じて、警察が高齢者から免許返納の運動を始めた。また75歳以上のドライバー ・・・続きを読む
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筆者

和田秀樹

和田秀樹(わだ・ひでき) 精神科医

1960年、大阪市生まれ。東大医学部卒。現在、国際医療福祉大教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長、川崎幸病院精神科顧問、緑鐵受験指導ゼミナール監修。専攻分野の老年精神医学、精神分析学のほか、大学受験を中心とした教育制度・政策、自ら監督をつとめたことがある映画についての発言も多い。著書に『感情的にならない本』『心と向き合う臨床心理学』など。

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