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国谷キャスター降板で番組コントロール狙う(上)

NHK上層部によるクロ現の「顔」交代に、現場からは「背景にあるのは忖度」の声

川本裕司 朝日新聞記者

NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスター=2004年6月、東京・渋谷NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスター=2004年6月、東京・渋谷
 23年間にわたりNHKの看板報道番組「クローズアップ現代」のキャスターを務めてきた国谷裕子さん(58)が3月17日を最後に降板する。続投を強く希望した番組担当者の意向が認められず上層部が降板を決断した背景には、クロ現をコントロールしたいNHK経営層の固い意思がうかがえる。

  クロ現は4月から「クローズアップ現代+」と番組名を一部変え、放送時刻も午後10時からと深くなる。

  NHK関係者によると、黄木紀之編成局長がクロ現を担当する大型企画開発センターの角英夫センター長、2人のクロ現編集責任者と昨年12月20日すぎに会った際、国谷さんの3月降板を通告した。「時間帯を変え内容も一新してもらいたいので、キャスターを変えたい」という説明だった。

  センター側は「国谷さんは欠かせない。放送時間が変われば視聴者を失う恐れがあり、女性や知識層の支持が厚い国谷さんを維持したまま、番組枠を移動させるべきだ」と反論した。しかし、黄木編成局長は押し切った。過去に議論されたことがなかった国谷さんの交代が、あっけなく決まった。

  国谷さんには角センター長から12月26日、「キャスター継続の提案がみとめられず、3月までの1年契約を更新できなくなった」と伝えられた。

  国谷さんの降板にNHKが動きを見せたのは、10月下旬にあった複数の役員らが参加した放送総局幹部による2016年度編成の会議だった。

  編成局の原案では、月~木曜の午後7時30分からのクロ現を、午後10時からに移すとともに週4回を週3回に縮小することになっていた。しかし、記者が出演する貴重な機会でもあるクロ現の回数減に報道局が抵抗し、週4回を維持したまま放送時間を遅らせることが固まった。

  報道番組キャスターや娯楽番組司会者については、放送総局長の板野裕爾専務理事が委員長、黄木編成局長が座長をそれぞれつとめ部局長が委員となっているキャスター委員会が決めることになっている。番組担当者からの希望は11月下旬に示され、クロ現の場合は「国谷キャスター続投」だった。現場の意向を知ったうえでの降板決定は、NHK上層部の決断であることを物語っている。

  現場に対しても「番組の一新」という抽象的な説明しかなかった降板の理由について、あるNHK関係者は「経営陣は番組をグリップし、クロ現をコントロールしやすくするため、番組の顔である国谷さんを交代させたのだろう」と指摘する。

  その伏線となったのは、2014年7月3日、集団的自衛権の行使容認をテーマにしたクロ現に菅義偉官房長官が出演したときの出来事だった。菅長官の発言に対し「しかし」と食い下がったり、番組最後の菅長官の言葉が尻切れトンボに終わったりしたためか、菅長官周辺が

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