メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

なぜ小保方氏への同情論が消えないのか(上)

「女は責任をとらなくてもいい」という弱者意識

杉浦由美子

記者会見で質問の内容を弁護士に確認しながら答える小保方晴子氏=2014年4月9日、大阪市北区拡大記者会見で質問の内容を弁護士に確認しながら答える小保方晴子氏=2014年4月9日、大阪市北区
 元理研研究員、小保方晴子氏の手記『あの日』(講談社)が発行部数25万部を突破した。売れるのは当然で、読み物として実に面白い。”世紀の論文捏造事件を起こした人物”が何を考えているのかが分かるのだから。一方で、この本がベストセラーになるのに伴って、小保方氏への同情の声もちまたでは強まっている。Amazonレビューをみても、擁護や共感の声が多数派を占めるし、街中でも女性たちから”小保方さんはかわいそう”という声を聞く。

  私がこの2年間ずっと不思議でならなかったのは、「なぜ、小保方氏を擁護する声が女性の間から起きるのか」ということだ。今回は、この謎について考えていきたい。前半では、若い女性層からも小保方氏への共鳴がある理由について言及し、後半では小保方氏がマスコミで面白おかしく書かれるのは、女性だからではない、という点について書いていきたい。

若い女性の間でも同情論

  2014年4月9日に行われた小保方晴子氏の釈明会見後、『女性自身』(光文社・2014年4月29日号)では、30代から60代までの主婦読者100人にアンケートを行った。小保方氏を支持するか否かという質問に対して、44人が「支持する」と答え、50代・60代は支持する、しないが同数だったが、30代・40代の6割は支持しないと回答した。

  この結果をみて、「女性も責任がある仕事を任されるのが当たり前の世代と、そうではない上の世代の感覚の違い」と私は分析をしていた。男女雇用機会均等法が施行される以前は、女性は責任ある仕事を任されることもなかった。だが、施行後の世代は、男性と同じように働くのが普通であるからだ。

  このアンケートの後、小保方氏はさらに窮地に立たされ、博士号を剥奪されもした。だが、手記の売れ行きをみていると、いまだに彼女を支持する人たちがいることが分かる。本というのは読み手が共感するから売れていくものなのだ。

  そして、私が個人的に驚いているのは、20代から30歳前後のアラサー世代においても、小保方氏擁護の声が目立つことだ。

  たとえば、私の同級生は、外食産業で20代の女性スタッフを束ねる仕事をしている。彼女はこう話す。

  「部下の前で、”記者やってる友達(杉浦)が小保方晴子のことを取材していてね”って話すと、若い子たちが『小保方さんはかわいそうだ』という。契約社員で入ってきて、その後、正社員になったような、地道にやってきた子が『小保方さんはちゃんとやっているようにみえる』と切なそうな表情を浮かべる」

「若い女性」なのに可哀想ではないか

  前回、インタビューで登場した武蔵大学の千田有紀教授は、若い世代の女性が小保方擁護に流れる理由をYahooニュース(個人)=2016年3月4日7時40分配信=で以下のように書いている。

  ”おそらく小保方さんは、彼女たち自身の投影 ・・・続きを読む
(残り:約951文字/本文:約2231文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

杉浦由美子の新着記事

もっと見る