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「効率」の視点を超えた文化庁の京都移転に

先進国の中で低い日本の文化予算を充実させ、芸術をより親しみやすく

菘あつこ フリージャーナリスト

文化庁の移転決定を受け、文化庁カラーの朱色にライトアップされた東寺の五重塔=2016年3月22日、京都市南区拡大文化庁の移転決定を受け、文化庁カラーの朱色にライトアップされた東寺の五重塔=2016年3月22日、京都市南区
  「文化庁が数年内に京都に」。そのニュースを読んで、「文化財は京都や奈良など関西に多いから良いかも知れないけれど、芸術の中心は、今現在、なんだかんだ言っても東京だから、大丈夫だろうか?」などと感じられた方は多いのではないだろうか。

 芸術のなかでも、特に私が専門としている劇場芸術(私はバレエやダンスなどの舞踊が専門分野だが、音楽や演劇など実演芸術全般を含めて)は、どう見ても東京とその周辺で行われるものの数が突出して多く、東京で10日間公演できても、関西や中部では1日か2日、それさえもなかったりというのが普通。それ以外の地域になると、さらにぐっと減る。美術やメディア芸術なども、やはり概ね東京が一番鑑賞機会が多いのではないだろうか?

  そして、それぞれのジャンルを代表する芸術団体もほとんどが主たる拠点を東京に置いているように見える。
国のさまざまな機関が東京に集中しており、それぞれのジャンルを代表する芸術団体もほとんどが東京およびその周辺という状況下、こと便不便に限って言えば、文化庁だけが京都に移ると、実務的に不便なことが多々おこるのではないかというのは容易に想像できる。

  とはいえ、地方の活性化が叫ばれ、東京一極集中の怖さ、大きな災害が起こった時に全ての国の機関が一カ所に集中しているのは危険という声があるなか、ほかにどこも移転を決定できなかったなかでただひとつ決定した文化庁の移転。その意味を私なりに考えてみたいと思う。

  まず、そもそも“文化庁”とはどんな仕事をしているところなのだろう? 文化財の保護、世界文化遺産の登録推進、宗教法人の認証、著作権に関する業務、国際文化交流に関する業務、それに芸術振興のための顕彰や助成など、多岐にわたる業務がある。

  文化財や伝統文化は、京都、それに奈良にも近い位置というのは相応しいように素人目に感じられる。その他の業務、中でも芸術に関しては、最初に書いたような心配が内外から起こりそうだ。

  けれど、それはあくまでも場所が離れることでの“不便”、“不効率”ということだろう。飛躍しすぎのように感じられるかもしれないけれど、“芸術”の本質を考える時、私はいつも“効率”と逆にあるものの大切さを思う。非効率に見える作業から生まれる心を打つ作品、 ・・・続きを読む
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筆者

菘あつこ

菘あつこ(すずな・あつこ) フリージャーナリスト

フリージャーナリスト。立命館大学産業社会学部卒業。朝日新聞(大阪本社版)、神戸新聞、バレエ専門誌「SWAN MAGAZINE」などに舞踊評やバレエ・ダンス関連記事を中心に執筆、雑誌に社会・文化に関する記事を掲載。文化庁の各事業(芸術祭・アートマネジメント重点支援事業・国際芸術交流支援事業など)、兵庫県芸術奨励賞、芦屋市文化振興審議会等行政の各委員や講師も歴任。著書に『ココロとカラダに効くバレエ』。

 

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