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保育士不足は薄給の問題ではない(下)

エリートママのクレームが保育士を追いつめる

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 前回、(中)編では、保育士が若い女性にとって憧れの仕事でなくなっている原因について言及した。今回は、保育士たちの離職が止まらない理由について考えていく。

 保育士の平均月額賃金データが低い理由として、若いうちに辞めてしまうので、勤続年数が短いから、という理由もある。華やぎのない地道な仕事でも、現場でやりがいを見いだせるものであれば、プライドを持てる。だが、現実的には、一部の保護者たちの心ない言動によって、保育士たちはモチベーションを落として辞めていくケースがあるという。後半は保育園に子供を預ける保護者層の変化により、保育士たちがストレスを抱えていることについて言及する。

子育ては「活躍」ではないのか

 ネットの匿名ブログの『保育園落ちた日本死ね!!!』というタイトルの投稿が話題になったが、あれを読んで、私は強い違和感をもった。

 「昨日見事に保育園落ちたわ。 どうするんだよ私活躍出来ねーじゃねーか」と書かれるが、活躍とは「社会に出て働くこと」だけなのだろうか。家庭で育児や家事に専念することは活躍ではないのだろうか。安倍内閣が掲げる「一億総活躍社会」の中に、家庭で子育てや介護などに専念する人たちは含まれないのだろうか。

 20年ほど前に、年配の男性が「子育ては偉業。とうてい僕にはできない」といい、私は強く反発をした。それは当時の私が無知だったからだ。身近で子育てを見たり、手伝ったりすると、いかにそれが偉業なのかわかってくる。

  その偉業である育児を専門にやっている保育士は、経験や技術が必要とされる重要な職業であり、尊敬すべきプロフェッショナルである。

  町でこんな風景を見かける。保育園の子どもたちが10人ぐらい手をつないで2列に並んで散歩をしていて、保育士が2人ほど付き添っている。あれをみるたびに私は「プロってすごい」とため息がでる。私が引率したら、逃走する子が続出し、列は乱れ、それが事故に繋がっていきかねない。専門職である保育士が見守っているから、彼らは列を乱さず、安全に散歩ができるのだ。

専業主婦への敬意のなさ

  重要かつスキルが必要とされる保育をしている保育士は誇れる仕事のはずだ。しかし、保育園の経営者や管理職は「若い保育士たちの自己評価が低くなっていくばかり」と頭を抱える。

  その理由には先ほどの「私活躍できないじゃねーか」という発言のように、保育を「活躍」と見なさない価値観が蔓延しているからではないか。

  私は拙著『ママの世界はいつも戦争』(ベスト新書)を書く際に、 ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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