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多様な教育機会確保法が不登校児の権利を侵害?

今国会では成立が見送られたが、フリースクールで法案の評価で賛否が分かれる

樫村愛子 愛知大学教授(社会学)

不登校の子の受け皿・フリースクールでスタッフとともに、それぞれの進度に合わせ勉強えおする子どもたち=2015年9月25日、福岡市東区拡大不登校の子の受け皿・フリースクールでスタッフとともに、それぞれの進度に合わせ勉強えおする子どもたち=2015年9月25日、福岡市東区
 東京シューレらフリースクール大手を中心に、現在フリースクールに通う子どもたちの社会的地位や権利を確保しようとして、超党派議連で不登校と夜間中学について検討を行ってきた通称「多様な教育機会確保法案」は、その経過の中で不登校(フリースクール)業界を推進派と反対派に分裂させることとなり、最近では反対運動も大きくなりつつある。もと当事者の社会学者貴戸理恵は、「フリースクール支援」になるならば意義深いといわれるものの、本当に子ども・親・支援者が望む支援になるのか、と問うている。フリースクールが財政難に苦しみ支援を求めているにしても、支援は標準化を必須とし、そこには陥穽がある。そしてまた、12万人を超える不登校児の中でもフリースクールに通う子は3.5バーセント約4200人に過ぎない(http://bylines.news.yahoo.co.jp/kidorie/20160228-00054843/)。

 現在は、選挙状況を反映し、参院の民進党が一転して衆院側に全会一致での成立を求め.夏の参院選をにらんで野党共闘の足並みをそろえるため、共産・社民両党が賛成しない同法案の成立を先送りした。

 この法の社会構造的問題-ネオリベ的側面については、公教育計画学会理事会が2015年6月15日付の声明で根本的批判を行っている。また今年に入ってからも再三白紙撤回を強く求めてきた。「不登校・ひきこもりを考える当事者と親の会 ネットワーク」らもこの間、反対署名や国会前でのスタンディングを行ってきた。また東京都の多摩市議会は2016年3月30日付で、同法案に対する慎重審議を求める意見書を可決している。

 公教育計画学会は2015年6月15日に「多様な教育機会保障法案」の段階で以下のような批判点を挙げている(http://koukyouiku.la.coocan.jp/H280401kyouikukikaikakuhokakuhohouanseimei.pdf)。

 ① 法案が言う「多様な教育機会」とは、何のためのそして誰のための「多様な教育機会」かが全く不明確である。

 ② 法案の想定している「個別学習計画の作成」と市町村教育委員会の認定等の制度構成は、「多様な教育機会」を謳いながら、実際には学習計画の立案や学校教育モデルを前提にして教育機会をとらえる発想でしかない。

 ③ この法案は、いま政権がすすめようとする教育制度の複線化を補完し、特別支援教育を強化することになる。

 また、「3.11座長案」(2016年3月11日)については、「一億総活躍社会」の実現のために ・・・続きを読む
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筆者

樫村愛子

樫村愛子(かしむら・あいこ) 愛知大学教授(社会学)

愛知大学文学部社会学コース教授。1958年、京都生まれ。東大大学院人文社会系研究科単位取得退学。2008年から現職。専門はラカン派精神分析理論による現代社会分析・文化分析(社会学/精神分析)。著書に『臨床社会学ならこう考える』『ネオリベラリズムの精神分析』、共著に『リスク化する日本社会』『現代人の社会学・入門』『歴史としての3・11』『ネオリベ現代生活批判序説』(新評論)など。

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