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携帯料金是正には「販売店の論理」を抜本改革せよ

実質値上げとなったキャリア3社の新料金プラン

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

auのCMで一寸法師役の前野朋哉さん(左から2人目)と桃太郎役の松田翔太さん(右から2人目)、金太郎役の濱田岳さん(右端)、乙姫役の奈々緒さん(左端)=2016年5月31日、東京都港区auのCMで一寸法師役の前野朋哉さん(左から2人目)と桃太郎役の松田翔太さん(右から2人目)、金太郎役の濱田岳さん(右端)、乙姫役の奈々緒さん(左端)=2016年5月31日、東京都港区
 ケータイキャリア(通信事業者)大手3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)の新料金プランが、去る5月末に一応出そろった。安倍首相の「値下げを」の発言を受けつつも、情報通信行政の監督官庁である総務省の問題意識は値下げ自体でなく①スマホ実質ゼロ円販売合戦をやめさせること、②乗り換え客ばかりが得する仕組みの排除、③ヘビーユーザーでない人に割安感の出る料金体系の導入、に向かい、無線電波の免許事業者である大手3社がこれに対応せざるを得なくなった、というのが今回の流れである。

  各社料金プランの概要、特徴、対比は、キャリア各社サイト、業界誌やWebサイトでの論評、また朝日新聞記事「携帯各社、新料金で『焼け太り』?長期割引わずか」(2016年6月1日)に詳しく、本稿では省略する。朝日新聞記事の見出しのとおり、端末ゼロ円の過剰競争をある程度やめた分のコストダウンでケータイ各社の利益が増え、その割に長期利用者や少量利用者への還元(割引)が少なく、値下げどころか実質値上げ、キャリア3社が増益になるかもしれず、一体この改革は何なのだ、消費者目線いずこへ、という論調だと総括できる。

  筆者は長らく、情報通信分野について見通しの立たない市場形成を総務省・経産省が後押しすることの愚と、その不出来な市場の結果責任をとらない体質を強く批判してきた。しかしこのケータイ料金の件については総務省の論陣はごもっともで、問題と責任は全面的にキャリア側にある。ただし、問題の根本はキャリア自身の料金体系ではなく、キャリアの名を冠する販売店現場に対して、キャリア側のコントロールが利かなくなっていることにある。このことは世にほとんど論じられていない。

  すでにキャリアのビジネスは、スマホの全国普及率が5割を大きく超えてきた(モバイル社会研究所『モバイルコミュニケーション2014-15』より)の中、キャリア独自のコンテンツやサービスは事実上終焉し、通信料の見返りは電波がつながること(品質)と使用量あたりの単価(通話何分、データ何ギガまで定額、等)だけの“土管屋”だ。格安SIM

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