外に出て磨く実力、ヴァルナ国際では日本出身の6人がメダル獲得
2016年08月31日
世界三大バレエコンクールのひとつとされるヴァルナ国際バレエコンクールで、20歳~26歳のシニア部門と15歳~19歳のジュニア部門合わせて、今年、6人の日本出身者がメダルを獲得した。金メダルこそいなかったものの銀メダル、銅メダルが複数で、17人のメダル受賞者の中でとても高い比率と言える。
ヴァルナ国際バレエコンクールは、ブルガリアのリゾート地であるヴァルナで開催されている世界コンクール。1964年に始まり、現在、隔年で開催されている。ミハイル・バリシニコフ、ニーナ・アナニアシヴィリ、シルヴィ・ギエム、ウラジミール・マラーホフなど、世界で活躍する(した)スターダンサーたちが受賞しており、日本人では初期に森下洋子、深川秀夫などがメダルを獲得したことで記憶しているバレエファンも多い。
ジュニアでは、京都の水野弘子バレエ学園出身で、昨年のローザンヌ国際バレエコンクールで入賞した折も話題になった金原里奈(彼女は、その後、イングリッシュ・ナショナル・バレエで研修し、正式入団が決まっている)と、大阪のヴァリアシオン・バレエスクールの益田隼がそれぞれ銀メダルに輝いた。また、韓国国籍での出場だが三重県四日市市在住の金世友もジュニアで銀メダルを獲得した。
さて、ヴァルナ、過去に出場したバレエダンサーに思い出を聞くと、目を輝かせて語る人が多い。加えて、口を揃えて“過酷なコンクール”と言う。約半月とコンクールにしては長い日程(今回は7月15日から30日)、野外劇場で行われるので、暗くなる夜の9時から(日本より暗くなるのが遅い)が本番、終了後の夜中が翌日のリハーサルとなる。リハーサルの順は抽選で決まるが、遅くなると翌明け方になる場合も日常茶飯事だ。
そして、1ラウンド、2ラウンド、3ラウンドは別の曲を踊らなくてはならない。男女ペアでグラン・パ・ド・ドゥなど10分前後の踊りを踊る場合で、1ラウンドでクラシック(古典)を1曲、2ラウンドと3ラウンドでは、それぞれ別のクラシック(古典)を1曲ずつに加え、コンテンポラリー(現代作品)も1曲ずつと、5曲を準備しなくてはいけない。ペアでなくソロ、1人で出場する場合は、グラン・パ・ド・ドゥの代わりに、ヴァリエーション(1人で踊るもの)を2曲ずつ踊ることになる。
さらに屋外ということで、小雨決行で床が濡れている時もあるし、床の条件は決してよくない。つま先立ちのトゥ・シューズでの高度な技は、よほどしっかりしていないと大変であると同時に、どんどんシューズがダメになる。男性のバレエ・シューズでも。
しかし、出場したダンサーは話す。緑あふれる劇場、ふと、見上げた時に星が輝く空、良い踊りには盛り上がる観客。“踊る意味”──根本的な意味を考える機会になったと話す人もいる。
そんなヴァルナで選ばれるのは、どんなダンサーなのか?
特にシニアでは、“プロフェッショナル”が求められるという声が多い。バレエダンサーは、世界中で通常、18歳~19歳くらいでバレエ学校を卒業してバレエ団に所属する。日本でよく話題に上るローザンヌ国際バレエコンクールは、甲子園のようなもので、学生のためのコンクールだから将来性が重要なポイントになる。未完成でも可能性が評価されることがある。
けれど、ヴァルナは違う。どれだけ表現できるか、どれだけ観客の心を揺り動かすか。今回、シニアで受賞した日本人3人は、全員、海外のバレエ団でプロとして踊るダンサーだった。観客の視線で磨かれるものが確かにあるのだろう。楽しんで表現し、観客を楽しませるダンサーたち。
そして今回、ジュニアも含め、たまたまかもしれないが、関西出身者ばかりが受賞していた。関東出身者が参加していなかったわけではない。それはどうしてなのだろう。
別に関東と関西で分けることもないのかもしれないけれど
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