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『学歴社会』から『塾歴社会』へ(上)

中高一貫名門校は、なぜ、塾に頼らざるえないのか

杉浦由美子

鉄緑会では、午後9時を過ぎても教室の明かりは一つも消えない=2007年、東京都渋谷区代々木1丁目拡大鉄緑会では、午後9時を過ぎても教室の明かりは一つも消えない=2007年、東京都渋谷区代々木1丁目
 今までも記事の中で、東大や国立医学部の合格者が多い”中高一貫名門校”ほど、放任主義であると書いてきた。御三家といわれる中高一貫校は基本的に大学受験対策をしない。優秀な生徒たちが集まるので、大学受験は自力でクリアできて当然なので、学校では違うことを教えるというスタンスだ。

 しかし、実際、生徒たちは中学から塾に通い、塾の力で東大や国立医学部に入っていく。放任主義の中高一貫校が東大合格者数を増やすのは、学校の宿題や補講が少ないので、生徒たちが、塾の課題に専念しやすいという部分もある。つまり、日本の秀才育成を担っているのは、塾といっても過言ではない。この現象について書かれた『ルポ 塾歴社会』(おおたとしまさ/幻冬舎新書)が今年発売された。今回は、このキャッチーな『塾歴社会』というキーワードに沿って、現在日本の偏差値エリート教育をみてみよう。

面倒見のいい学校の生徒も塾に行く

 先に書いたように、偏差値が高めの難関校は放任主義だが、一方、それ以外の私立は「塾に行かずに大学受験対策ができること」を売りにする。子供の進学を「ほどほどでいい」と考えているサラリーマン家庭ですら、私立中高一貫校に子供を入れるのは、「公立中学に行かせると塾代がかかる。私立なら授業料がかかるけれど、全部学校が面倒をみてくれるし、6年制教育は大学受験に向けて効率がいい」と考えるからだ。

  しかし、そのように手厚さを売りにする私立中高一貫校でも、結局、生徒は塾に行き、授業中にみんな塾の宿題をやっている。

  現役の生徒に「なぜ、学校が大学受験対策まで面倒をみてくれるのに、塾の勉強をするのか」と訊くと、「塾の宿題の方が魅力的だから」と答えが返ってくる。

  鉄緑会を取材した際に、 ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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