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問題発言でもトランプの支持率が底堅い理由

4年前と変わらぬ民主党と共和党の予想獲得州、選挙を動かすのは経済とドブ板戦術

久保田智子 アナウンサー

第2回テレビ討論会を中継するパブリックビューiイング会場で歓声を上げる人々=2015年10月9日、米セントルイス第2回テレビ討論会を中継するパブリックビューイング会場で歓声を上げる人々=2016年10月9日、米セントルイス
 大統領選のテレビ討論会は「大統領選の行方を左右する」などとよく言われる。メディアはその重要性を強調し、華やかな演出でお祭りのように騒ぎ立てる。しかし実際にテレビ討論会がどれだけの票を動かすというのだろうか。実は、さほど大きくは動かさないのではないかと思っている。

  今回の大統領選では3回のテレビ討論会が行われた。CNNは終了後すぐさま視聴者に調査を行い、第1回62対27、第2回57対34、第3回52対39でいずれもクリントン勝利と判定した。それに対してトランプ支持者は、大手メディアは間違っている、本当はトランプが勝ったのだと、独自の非科学的な調査判定を持ち出して反論していた。そのやりとりを見ていて私はまるで恋愛みたいだなと思った。周りがあんなひどい人やめなさいとどんなに忠告しても「彼は本当はいい人なの」と聞く耳を持たないよくあるパターンと重なったのだった。

  討論会の勝敗がどうであれ、一度投票する候補を決めると有権者の気持ちは簡単には変わらないのだと妙に納得できた。しかもテレビ討論会は選挙戦の最終盤に行われるため、すでに多くの人が誰に投票するのかを決めてしまっている。第3回テレビ討論会は政策に基づいた議論となり2人の違いがよくわかったのだが、その直前にMSNBCが行った調査では「このテレビ討論会をみて投票先を変えるか?」との質問に95%の人が「変えない」と答えているのだった。

  もちろんテレビ討論会に意味がないというつもりはない。候補者同士が顔を合わせ議論する意義は大きいし、それによって候補者の支持率も上下する。第2回テレビ討論会後の世論調査では、トランプの支持率は大きく下降し、クリントンの支持率に一段の伸びが見られた。討論会の2日前、トランプがバスの中で「スターなら何でもできる。女性の性器だってつかめる」などと発言する猥褻な映像が報道されたが、討論会でトランプは「ロッカールームでの会話だ」として重要視しなかった。この2つのことがあいまってトランプは多くの支持を失った。

  しかし、テレビ討論会に限らず、トランプはこれまでも驚くような言動を繰り返してきた。その都度支持率は下がったが、いつも一時的でしばらくすると戻るのである。この1年のトランプ支持率(対クリントン)を見ると38%から46%の間を上下している。(『リアル・クリア・ポリテックス』の世論調査の平均)問題発言を繰り返したにも関わらず、ほぼ8%の範囲内での動きに留まり、どんな発言であっても38%を割らないのだった。

  ひょっとするとテレビ討論会だけでなく、多くの票は初めから動かないのではないかとすら感じてくる。トランプは

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