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高齢者の万引きは本当に増えているのか(上)

一人暮らしの老人の犯行では駆けつける家族なく検挙に、見えにくい発生件数の実態

河合幹雄 桐蔭横浜大法学部教授(法社会学)

 高齢者ドライバーによる痛ましい自動車事故が、連日報道されている。高齢者の犯罪増加も話題となっている。様々な報道のされかたをしているが、高齢者による自動車事故の件数は、ここ10年間毎年減少しており、事故に占める高齢者の比率のみが増えていることを正確に伝えている報道もある。それでも、人々の印象は、高齢者犯罪は増えているにきまっているというところであろう。私にできる限り、現状を正確に把握して伝えておきたい。

  犯罪白書の一般刑法犯、すなわち、刑法犯から自動車事故を除いた犯罪の検挙人員を見てみると、2014年1年間における65歳以上の検挙人員は47252人である。これは、2006年の46637人からほとんど増えていない。ところが、1990年の検挙人員は6344人しかいない。実は、高齢者の検挙人員が爆発的に増加したのは90年代に入ってから2006年までの間である。

  この間の変化については、既に太田達也の詳細な分析がある(「高齢者犯罪の実態と対策」『警察政策』2009年)。また、犯罪白書にも毎年高齢者犯罪についての分析がなされている。それらのデータから、1990~2006年と2007~2014年の前後半に分けて概要をまとめたい。

  まず、高齢者人口増について検討しておこう。65歳以上人口は、1990年には1493万人、2014年3300万と約2倍強となっている。特に2006年は2660万と前半は人口増の比率が急激である。この要因は大きいが、それでも検挙人員が7倍以上になったことのすべては説明できない。人口比での高齢者の検挙人員増は、前半4倍弱増、他方、後半は2割弱の減少となっている。

  犯罪報道はどうなってきたかといえば、1995年の地下鉄サリン事件まで全年齢対象にしてもほとんどなく、97年以降は被害者がクローズアップされ、とりわけ少年犯罪が注目された。ここ10年、少年による凶悪事件は急減しており、犯罪に占める高齢者犯罪の比率が上がってきたせいで、高齢者犯罪が注目され始めている。報道に振り回されると、全く実態と異なる印象を受けてしまう。

  日本の犯罪状況は、海外と比較すれば、少年と若者の犯罪が著しく少ないことが特徴である。これこそ注目されるべきだが ・・・続きを読む
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筆者

河合幹雄

河合幹雄(かわい・みきお) 桐蔭横浜大法学部教授(法社会学)

桐蔭横浜大法学部教授。1960年、奈良県生まれ。京都大大学院法学研究科で法社会学専攻、博士後期課程認定修了。京都大法学部助手をへて桐蔭横浜大へ。法務省矯正局における「矯正処遇に関する政策研究会」委員、警察大学校嘱託教官(特別捜査幹部研修教官)。著書に『安全神話崩壊のパラドックス 治安の法社会学』『日本の殺人』『終身刑の死角』。

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