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高齢者の万引きは本当に増えているのか(下)

この10年間は微減傾向なのに、大きく報道された結果、増加している印象を与えている

河合幹雄 桐蔭横浜大法学部教授(法社会学)

 かつて万引きと言えば少年だったのだが、今や高齢者が実数では上回る。万引きについては、二つの変化に注目しなければならない。第一は、特定非営利法人全国万引犯罪防止機構が2005年6月23日に発足し、万引きの被害届を警察にできるだけ出してもらうようキャンペーンが始まったことである。

「店舗内でも警察に通報します」と書かれたポスターを貼った万引き防止に力を入れる書店=2011年、福岡市中央区拡大「店舗内でも警察に通報します」と書かれたポスターを貼った万引き防止に力を入れる書店=2011年、福岡市中央区
 被害が軽微なら、警察に通報したことによって、人手が取られることを嫌って、店としては、通報せずにすますことが少なくないのが実態であった。それを無くそうという動きである。また、刑法改正により、2006年5月28日施行以降、235条の窃盗の刑罰として、それ以前は懲役刑のみであったことに加えて50万円以下の罰金刑を可能とした。これは、軽微な窃盗事件を立件する方針に他ならない。このように検挙人員を増やす方向の改革が進められているにもかかわらず、検挙人員は増えていない。

 このように検討してくると、2006年以降の高齢者の万引きも凶悪事件も微減傾向であることは間違いないように思われる。この結論を出すにあたって、唯一の懸念は、他稿で述べたように、予算のルールが変わり、「犯罪が増加すれば予算増」から「政策目標である犯罪減少が達成されれば予算増」となったため、犯罪認知件数が「過少申告」されている懸念があることである。これについては決定的なことは言えないので注意の喚起に留めたい。

 以上が、高齢者の犯罪実態であるが、最後に政策形成と報道という観点から昨今の動きを概観しておきたい。2006年以降高齢者ドライバーによる交通事故は微減傾向、他の刑法犯についてもおそらく微減傾向であるが、少年と若い成人がドライバーである交通事故とその他の刑法犯の減少が急減と言ってよい状況にある。その結果、交通事故や犯罪に占める高齢者の割合は急増している。

 政策方針として、高齢者ドライバーによる交通事故と犯罪に焦点を当てて重点的に対応することは全く正しいと考える。そのさいに、 ・・・続きを読む
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筆者

河合幹雄

河合幹雄(かわい・みきお) 桐蔭横浜大法学部教授(法社会学)

桐蔭横浜大法学部教授。1960年、奈良県生まれ。京都大大学院法学研究科で法社会学専攻、博士後期課程認定修了。京都大法学部助手をへて桐蔭横浜大へ。法務省矯正局における「矯正処遇に関する政策研究会」委員、警察大学校嘱託教官(特別捜査幹部研修教官)。著書に『安全神話崩壊のパラドックス 治安の法社会学』『日本の殺人』『終身刑の死角』。

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