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外でも内でもなく選ばれた上田良一NHK次期会長

3人だった最終候補、籾井会長は早々と再選の可能性がほぼ消えていた

川本裕司

会見で記者の質問に答える上田良一NHK次期会長=2016年12月6日、東京都渋谷区拡大会見で記者の質問に答える上田良一NHK次期会長=2016年12月6日、東京都渋谷区
 次期会長に12月6日、元三菱商事副社長の上田良一経営委員が選ばれたNHKの局内は、安堵感に包まれている。就任初日の記者会見から始まる失言などのトラブル続きだった籾井勝人会長が去るうえ、代わりに政権との距離を問われかねない人物が送り込まれなかったことに胸をなで下ろしているのだ。いつも最後までもめるNHK会長選びは今回、任期切れの1カ月以上前に決着した。民間出身とはいえ2013年6月から常勤の経営委員としてNHKに関わってきた上田氏は、NHKの「外」でも「内」でもない中間的存在。新会長が選出されるまでの内幕を明らかにする。

  上田会長選出について、NHK幹部は「経営委員会の監査委員として上田氏の理詰めの仕事ぶりは知られていた。引き受けてもらってありがとうございます、の一言」。あるNHK職員も「失言しては国会に呼ばれる籾井会長の再選は避けたかった。とはいえ、官邸と密につながっているとされる元理事などが会長になるのは最悪と思っていたので、ひと安心」と語った。

経営委の支持が乏しかった籾井会長

  経営委員会関係者によると、委員が理由をつけて推薦した会長候補は3人。民間出身は上田氏だけといい、NHK出身者はいなかった。3人それぞれについて12人の経営委員が投票した結果、会長選任に必要な9人以上の票を得たのは満票の上田氏だけだった。

  この投票に先立ち、現職の籾井会長を次期会長の候補とするかどうかについて投票したところ、支持はほとんどなかった、といわれる。経営委から3度注意を受けた籾井会長の続投に賛成する雰囲気は、もともと醸し出されていなかったという。このため、石原進・経営委員長(JR九州相談役)が6月に「籾井さんについては是々非々で考えていきたい」と発言したことに、違和感を覚える向きもあったようだ。

  籾井会長は2014年1月25日に就任した当日、「(国際放送で)政府が右ということを左というわけにはいかない」「(慰安婦の問題は)どこの国にもあったこと」と発言して非難を受けた。

  その直後にも全理事10人に日付を空欄にした辞表提出を要求。意に沿わないと見た専務理事2人には辞任を求めて断られると、「ターゲット80統括補佐(北海道・沖縄)」「同(首都圏・関西)」という担当を新設し、以前の担務を取り上げた。このほか、定期異動でない時期に秘書室長を事実上更迭するなど「独断人事」といえる発令を繰り返した。

  こうしたふるまいが野党からの批判を集め、国会に何度も呼ばれては釈明に追われた。NHKのOBが連名で、籾井会長罷免を求めて経営委に申し入れるという異例の事態が続いた。

  しかし、受信料収入の伸びは順調で営業面の落ち込みはなかったことが籾井会長の支えとなり、再選への意欲をふくらませていったようだ。

  8月末には懸案だった東京・渋谷の放送センターを、建設積立資産などを使い約1700億円で建て替える計画を発表。好調の受信料収入による「余剰金」を ・・・続きを読む
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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部員

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員。10年、論説委員兼務。17年4月から東京社会部。著書に『ニューメディア「誤算」の構造』。共著に『テレビ・ジャーナリズムの現在』『被告席のメディア』『新聞をひらく』。

 

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