メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

『逃げ恥』にみるアラフィフ女の生真面目さ

「あの女は独身だから」的な差別への反発はライフスタイル関係ない

杉浦由美子 ノンフィクションライター

TBSのドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」に出演している石田ゆり子=2016年3月拡大TBSのドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」に出演している石田ゆり子=2016年3月
 今クールのヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)では、石田ゆり子が演じる土屋百合(以下、百合ちゃん)に注目が集まっている。ドラマでは49歳化粧品会社部長代理で、いまだに処女という設定だ。以前の記事で、私はこの設定にとてもリアリティを感じていると述べた。なぜなら、私の周囲にこういう女性が何人かいるからだ。さて、私はこの欄では、原作ファンとして、原作にはないドラマのオリジナルの魅力について言及してきた。今回は再びドラマ特有の百合ちゃんの描かれ方にスポットを当ててみたい。

コンプレックスよりも、理不尽さへの反発

  原作にはないドラマオリジナルのエピソードとして、百合ちゃんが会社で遭遇するトラブルが描かれる。会社であるミスが起きる。それについて、百合ちゃんが会社の男性幹部にかみついて、要求をのませる。すると、後から、男性たちが「土屋は独身だから必死なんだ」と揶揄する。それを耳にした、百合ちゃんは辛そうな表情をする。

  原作の百合ちゃんは年齢が50歳を超えていることもあり、たぶん、そう言われても無視をするだろう。ライフスタイルで人を差別した相手のレベルの低さに、呆れるだけだろう。

  だが、ドラマの百合ちゃんは愚直に反応をする。なぜかといえば、原作の百合ちゃん以上に真面目だからだ。
現在、職場でのハラスメントについて取材をしているが、「あの女は独身だから」「子供を産んでないから」といった差別的な発言があった時に、反発するかスルーするかは、本人のライフスタイルとは関係ないのだ。

  実際、ある組織で「”女は子供を産んで一人前”という発言を繰り返す管理職がいる。ハラスメントだ」とコンプライアンス部門に訴えがあったケースでは、被害報告をとりまとめたのは、子供がいる50代前半の既婚女性だった。

  家族の形態で、人を差別することが職場でまかり通る理不尽さを、無視できない真面目さを持つか否かは、本人のライフスタイルに関係ない。

  つまり、「土屋は独身だから必死なんだ」という発言を百合ちゃんがスルーできなかったのは、自分のコンプレックスを刺激されたからではなく、真面目だからだ。差別発言をする男性幹部たちの非常識さが許せないのだ。

高学歴女性たちのいじめの巧妙さ

  さて、この会社でのトラブルに関して、もうひとつドラマオリジナル要素がでてくる。百合にセクハラ疑惑が浮上した時に、ヒアリングしたコンプライアンス部の女性同僚(百合と同世代)はセクハラ疑惑を否定し、それから、育休で出世コースから外れた自分たちの分も、百合に期待しているという。この同僚女性がけしかけて、百合を幹部のところに異議申し立てをさせに行かせ、先に紹介した差別発言のエピソードに繋がっていく。

  百合は「自分はみなに期待されている」と信じ、頑張っているわけだが、ここに、ドラマオリジナルのホラー性が現れる。

  ・・・続きを読む
(残り:約705文字/本文:約1967文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

杉浦由美子の新着記事

もっと見る