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長谷部誠が協会職員199人に送ったXマスカード

ドイツからサッカー協会職員のフルネーム入りで届けるキャプテンシー

増島みどり スポーツライター

 22日早朝、ドイツ・ブンデスリーグのわずかなウインターブレイク(冬季中断)を使って日本代表のキャプテン、長谷部誠(32=フランクフルト)が一時帰国した。短い休暇中に、すでに入籍した夫人と挙式するほか、ユニセフの活動を支援するため、寄付されるコインの仕分け作業を手伝うイベントに参加するなど多忙を極める。しかし1年を無事に終え帰国した安堵感、直前にフランクフルトから2018年までの契約延長オファーを受けたやりがい、私生活の充実ぶりを示すかのように、ロビーで待ち構えていたサポーターたちへのサインや写真撮影にも、穏やかな笑顔で対応する。

  ファンからクリスマスプレゼントをもらって「ありがとうございます」と会釈していたが、自身もまた、受け取った人々を想像以上に感激させる「クリスマスカード」を公にせず送っていたようだ。

  今季、日本代表最終戦となるロシアW杯アジア最終予選サウジアラビア戦を勝利で終え、協会にもやっと落ち着いた雰囲気が漂い始めた12月上旬、日本サッカー協会(東京・文京区)に勤務する199人にもなる全職員1人ずつに届いたカードには、直筆でそれぞれのフルネームが入り、「いつもありがとうございます」と、メッセージとサインが記してあったという。

  「自分の名前が書かれていましたし、これを全員に?と、受け取った職員同士で見せ合って驚きました。こんなメッセージを代表選手からもらった経験はなかったので」職員はそう話す。

日本代表として100試合目の出場を果たし、チームメートから祝福を受ける長谷部(17)=2016年10月6日、埼玉スタジアム拡大日本代表として100試合目の出場を果たし、チームメートから祝福を受ける長谷部(17)=2016年10月6日
  9月にスタートしたW杯最終予選初戦のUAE戦で、2006年2月(アメリカ戦)、ドイツW杯を目指すジーコ監督体制下でAマッチ初出場を果たして以来、実に10年をかけて積み重ねた100試合出場を達成。試合に敗れたために祝福ムードは消えてしまったものの、史上6人目の快挙でもあった。100試合の記念カードは、一区切りに感謝するために代表スタッフの協力を得て送られた。

  ジーコ監督はW杯予選を突破した後、「ドイツ大会以降の日本代表を引っ張る若手たちにも、代表の厳しさや重みを伝えたい」と若い選手、代表に呼ばれなかった選手を招集。長谷部もその1人だった。

  10年の南ア大会で岡田武史監督にキャプテンに任命された後、ザッケローニ監督のブラジル大会、途中退任したアギーレ監督、ロシアを目指すハリルホジッチ監督の代表と、6年にわたって4人の監督のもと「代表の重み」を体現し続けているのだから、ジーコ監督の願い以上だろう。

6年のキャプテンシーが磨いたマネージメント能力

  22日、長谷部は「日頃、(全職員に)なかなかお会いできませんが、メッセージ通り本当に皆さんのお陰だと感謝しています」と、照れ臭そうに話すだけだった。

  UAEに敗れた後、協会にはハリルホジッチ監督の采配や様々な批判が寄せられた。1枚のカードはそういった電話に日々対応する職員を労い、ピッチを離れた「チーム」をまとめあげる力を持ったようだ。

  2017年3月にリスタートする最終予選の後半戦は、中東勢とのアウェー3試合をこなさねばならず、さらに厳しい戦いとなる。現在は出場圏内のグループ2位には付けているが、上位4カ国の実力は拮抗しており5番目の代表の座を争い、大陸間のプレーオフまでもつれる可能性もあるだろう。もちろん自身のポジションも確約されてなどいない。今年を振り返り、2017年への気持ちをこう表した。

  「良くも悪くも、色々経験できた1年だった。人間としての幅は広げられたように思う。残り半分の予選、しっかり覚悟を持たないといけない」

  サポーターやスポンサー、強化担当の現場への感謝だけではなく、何よりも身近で支えている人へ直接的なメッセージを発信する。6年もキャプテンマークを巻いてきた理由であり、その中で得た「長谷部流マネージメント」の証なのかもしれない。 ・・・続きを読む
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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

スポーツライター。1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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