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W杯サッカーの大変革で出場国より開催国が激変か

FIFAが決めた出場48カ国への拡大路線とインパクト

増島みどり スポーツライター

W杯アジア最終予選のサウジアラビア戦の前半、先制のPKを決める清武=2016年11月15日、埼玉スタジアム拡大W杯アジア最終予選のサウジアラビア戦の前半、先制のPKを決める清武=2016年11月15日、埼玉スタジアム
 3月に再スタートを切る2018年ロシアW杯アジア最終予選を前にもうすぐ帰国する、日本代表・ハリルホジッチ監督も「何だったらロシア大会から拡大してくれ」とジョークを飛ばすかもしれない。

  現在日本はB組2位。サウジアラビア、オーストラリア、UAE、イラク、タイとの2ラウンド目では中東でのアウェー3戦と過酷な日程を勝ち抜かねばならない。2つの組の上位2カ国が出場を決め、3位同士はアジア最後の枠をかけて対戦、勝った国が北中米大陸とのプレーオフに回る。アジア予選は他の大陸予選と比較して東西が最も長く、最大で6時間の時差があり、中東の高温多湿の砂漠気候、宗教による(ラマダンなど)日程調整など、様々な困難が時にピッチ内よりも手強いライバルに転じる。

  日本サッカー協会の最高顧問でもある元FIFA理事の小倉純二氏に取材で教えられた話がある。日頃はジョークを言い合い、冷静かつ洗練された雰囲気で進行する理事会も、大陸間の出場枠を決定する会議だけは空気が一変するという。

  「直近のW杯での成績を取り上げ、面と向かってその実力ではむしろ減らすべきと言いますし、実力の欧州、南米はここぞとばかりに結託して譲りません。私は、アジア代表として発言をして来ましたが、在任中、ある国の理事が怒って退席する場面もありました。話が出場枠となると殺気立つのです」

  なかば笑い話のように聞いたが、中東のアウェーに苦しむ状況も、出場枠をめぐって大陸の代表者がバトルを展開する事態も、もう終わりを告げる。

  1月10日、FIFAは18年ロシア大会、22年カタール大会の次の開催となる26年から出場枠を一気に16カ国拡大し現行の32カ国から48カ国による80試合を行うと決定したからだ。1930年にウルグアイで行われた第1回大会出場は13カ国でその後24、32カ国となり現在に至る。

 ウルグアイから記念すべき1世紀を目前にする96年目の大変革で、FIFAに加盟する約200の国と地域のうち、約4分の1が出場できるという極めてオープンな大会に変貌する。予選で、メディアが過酷な予選を煽るために繰り返し使ってきた「死の組」にも、もう出番はなくなるだろう。

  「競技レベルが低下する」「関心が薄れ、逆にサッカー人気が落ちるのでは」といった声はある。しかし日本だって、出場枠が32に増えたフランス大会から拡大したアジア枠3.5の最後の切符をイランとのプレーオフで掴んで(ジョホールバルの歓喜)初出場を果たしている。フランス大会は3敗したものの、世界への扉を開いた98年以降、2002年の日韓W杯で大会を成功させ初の決勝トーナメントにも進出。10年南ア大会でも16強進出と20年ほどの短期間で急成長を遂げた背景には間違いなく、W杯出場がある。

  日韓がいる東から中東の西だけではなく、アセアン諸国やインドを含む南地域も近年、豊かな経済をバックにサッカーが急進歩している様子を目の当たりにする。アジアを見ても出場国拡大は決して悪くない。

インファンティーノ会長の公約 放映権は持ちこたえるか

  前会長のブラッター氏、副会長だったプラティニ氏の失脚後、FIFAはスイス人の新会長、インファンティーノ氏のもと「オープンでフェアな運営」(同氏)に大きく舵を切った。会長選挙の公約のひとつが、これまでも行われてきた加盟国への資金支援(ゴールドプロジェクト)の拡充だ。同氏は選挙活動の中で約37億万ユーロ(約4400億円)を今後10年かけ2026年のW杯開催までに「各国協会に再分配する」とし、これがサッカーで発展を目指す国々からの支持を集めたとされる。

  W杯出場枠を拡大し、支援をさらに大きなものにして、W杯の試合数は64から80に(3カ国16組で予選を行い上位2カ国が32カ国による決勝T進出)増えたとはいえ、 ・・・続きを読む
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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

スポーツライター。1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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