給付型奨学金の創設は重要な一歩
2017年03月02日
奨学金のあり方についての関心が高まっている。貸与型の奨学金を利用して高校卒業後に大学や短大、専門学校に進学したものの、卒業時に多額の返済を抱えることとなり、社会人としての生活に困窮する若者の存在が深刻な社会問題として認識されるようになった。昨年末に文部科学省が発表した「高等教育進学サポートプラン」は、給付型奨学金の創設を含むもので、高校卒業後の進学に際する経済的困難を少しでも軽減するという意味において、重要な一歩である。
そもそも、奨学金は何のためにあるのか。漠然と、進学が経済的に厳しい人に資金援助をするのではなく、なぜ社会が個人の学びを支える必要があるのかを考え、ビジョンに向けた仕組みが整備されることが必要だと思う。
米国では、奨学金は「ニード・ベース(必要型)」と「メリット・ベース(能力型)」と分類されることが多い。前者は、厳しい経済状況にある者が進学を志す際の財政支援を指し、後者は経済状況とは関係なく、学業やスポーツ、その他の活動において優れた業績を持つ者が進学を志す際の財政支援を指す。日本でも、成績優秀者に対して授業料が免除や減免になる制度を持つ大学があるが、米国でいうところの「メリット・ベース」の奨学金といえるだろう。米国では、大学が優秀な学生を集めるためにメリット・ベースの奨学金制度を充実させ、学問、スポーツ、芸術などに秀でた学生に対し、奨学金枠を提供することが広く行われている。
今回の日本政府の給付型奨学金案は、「ニード・ベース」を想定したもので、社会経済的に弱い立場に置かれた人が高等教育を受け、社会に尽力できる存在になることを応援する重要な取り組みである。一方で、必ずしも社会経済的に困窮していなくとも、より一層のサポートがあれば、より高度な教育機会を得て、更に大きく羽ばたく可能性を秘める若者は存在する。そのような若者への教育投資を行う「メリット・ベース」の奨学金制度の拡充も今後の重要な検討課題であると思う。
筆者が運営する一般財団法人教育支援グローバル基金では、返済不要の奨学金と人材育成プログラムへの参加機会の両方を提供する事業「ビヨンドトゥモロー」を開催している。親を亡くしたり、児童養護施設に暮らしているというような社会経済的なハンディキャップを持つ学生の中で、
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