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告白し前面に立つ認知症の人たち(下)

「新しい時代」をめざし26日から京都で国際会議

町亞聖 フリーアナウンサー

BPSD(行動・心理症状)は言葉にならないメッセージ

 「妻が認知症だと認めたくなかった」お風呂に入らない、排泄が上手く出来ない・・・。かなり深刻な状況になっているにもかかわらず、誰にも相談できずに1人で抱え込んでしまうケースが特に男性に多い。“プライドが許さなかった”と正直に話してくれた人もいたが、これは特別な事例ではないと感じている。

夕食の買い物に行くために、スーパーのチラシを見て職員と相談する認知症の波多野和さん=2016年3月14日、北海道恵庭市夕食の買い物に行くために、スーパーのチラシを見て職員と相談する認知症の波多野和さん=2016年3月14日、北海道恵庭市
  「物忘れは年のせい」と認知症の初期のサインを家族は見逃してしまっていないだろうか。これまで認知症の介護をしている数多くの家族にお話を伺ってきたが、認知症と診断を受ける前に多くの家族が何かしらの異変を感じている。しかし「まさか認知症であるはずがない」と無理やり疑問を打ち消したり、現実を受け入れたくないという心理がどうしても働いてしまう。

  残念ながらその間に適切なケアや接し方ができていないために認知症の症状を悪化させてしまっている場合がある。かつて問題行動ともいわれた徘徊、不潔行為、暴言などのBPSD(行動・心理症状)には必ず理由があると言われている。BPSDは認知症の人からの言葉にならないメッセージだと表現した先生がいたが、まさにその通りだと思う。

  一番大きな不安を抱えているのは本人であることは間違いない。症状だけに囚われて、禁止、抑圧、否定などの対応を取ってしまうと本人をさらに混乱させ傷つけることになる。必要なのは“何を訴えているのか”と想像力を働かせて適切なケアや対応をすること。そのことがBPSDの改善に繋がることはすでに現場で証明されている。

  「早期発見、早期絶望」の前に現実から目を逸らす家族・・・。認めたくないという気持ちは十分理解できる。全国に1万人以上の会員がいる「認知症の人と家族の会」の代表理事の高見国生さんは「認知症当事者のその人らしさをよく理解しているのは家族です。その人らしさを引き出す役目が家族には出来る」と言っていた。家族が認知症になったことをいつまでも嘆き悲しむのではなく“新しい人生”を夫婦や家族で再び歩んでいくと前向きに考えて欲しいと。

「カーサン アリガトウ」・・・ぼけても心は生きている

  その高見さんが議長を務める世界約70カ国が参加する国際アルツハイマー病協会(ADI)国際会議が日本の京都で今月26日から開催される。会議を主催する「認知症の人と家族の会」の活動の歴史は長く、発足したのは1980年のこと。介護を語ることがタブーとされていた時代、医師でさえさじを投げる状況の中で

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