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テレワーク川柳に見る、働き方改革の本当の壁

改革後の多様なイメージが具体化されない現状をどう打ち破るか

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

自宅が職場となるテレワークでは、居間が仕事場に=2005年、横浜市自宅が職場となるテレワークでは、居間が仕事場に=2005年、横浜市
 働き方改革が、ポジティブにもネガティブにも独り歩きの途上にある。高齢化・人口減に端を発するマクロな政策誘導の下手くそさと、職場での個別体験に基づくミクロなトークと、過労死報道などでの弱者救済と‘炎上’が交錯する世の雰囲気とが混在して、改革後の多様なイメージがいつまでも具体化されない、というのが端的な状況かと思う。

  パソコン、ケータイ、テレビ会議システムなどITを駆使することが、働き方の無駄を省き、働き方を変える手段の一つになりうることは、誰も否定しないだろう。IT自体のセキュリティ(情報漏洩)はもちろん、ワーカーが起こす人災(紛失、操作ミスなど)、執務室外での仕事を前提にした労務制度、仕事内容ごとにITを使う場面の向き不向き、そして同僚・上司・部下・家族・公共の視線が織りなす「職場」の雰囲気、などさまざまな障壁が発生する。

  このITをツールとして前面に押し出して働き方改革の営みを、政府は「テレワーク」と名付け、もう15年以上も複数省庁挙げて推進中だ。もちろんその15年の間、ITの技術的成長と国民的普及があり、労務制度も以前により柔軟な仕組みができており、公共スペースでPCやケータイで仕事をする人を受け入れる社会の雰囲気も徐々にできてきているとは思う。たぶん問題は同僚・上司・部下・家族による、違和感あふれる冷たい視線に集約されつつある。

  自宅での在宅勤務’、外出先での‘モバイルワーク’、複数の執務室を使い分ける‘サテライトオフィス’などを包含した「テレワーク」の現在位置は、あまりにも世に知られていない。政策や企業事例の内実を見るに、どうも決定的に足りないのは、エスプリの利いた宣伝・啓発策のように思える。

  その啓発活動の実施窓口となっている(一般社団法人)日本テレワーク協会(ライフコース多様化とテレワーク部会)が、この2年ほど公募・選定による「テレワーク川柳」を発表している。こうした小難しい課題を笑いで考えさせ、社会の課題を前向きに取り組むためのよいきっかけになりうるものと思う。

  (直近報道発表)http://www.japan-telework.or.jp/oshirase/117.html (2016年度)http://www.japan-telework.or.jp/files/doc/20170214senryu.pdf (2015年度)http://www.japan-telework.or.jp/files/doc/20160427senryu.pdf に一般公開されているものをいくつかご紹介し、読者みなさんと、くすっと笑って考えたい。

  ◆管理者の オレ在宅でも 回るとは 作:高嶺の花水木

  ◆介護する 親の様子も 聞く上司 作:かきくけ子

  ◆出社して なんぼと唱える 粘土層 作:ぽん太

  ‥‥中間管理職に実感をもって

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