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浅田真央は、来季こそ、今の時代こそ、必要だった

「トリプルアクセルのマオ」ではなく、身体芸術の粋を競うパフォーマーとして

青嶋ひろの フリーライター

フリーの演技を終えて拡大ソチオリンピックでフリーの演技を終えて=2014年

ジャンプで勝てなくても

 2015年秋、浅田真央が復帰を発表した頃、幼少期から浅田を応援してきたあるアスリートは、「真央ちゃんの負けるところなんか、見たくない」と言った。しかしこの時、「見たいのは勝つところだけじゃない」と考えることはできなかっただろうか。

 フィギュアスケートは、ジャンプが跳べなければ勝てない。しかし、ジャンプ無しでも「素晴らしい作品」は作れるのだ。

 究極のところ、私たちはこのスポーツに何を見たいのか? ジャンプの戦いとは別に、氷の上で見せられる一番の美しさを追求した演技は、いつまでも心に残る。滑りそのものの美しさ、陸上ではできない動きの美しさ、人の感情が、音楽と溶け合うさま……ジャンプで勝てなくても、フィギュアスケートとして最高のものを――。それを見せられるまでの選手に、昨年(2016年)の浅田真央はなっていた。

 かつて「ジャンプのマオ」と言われた彼女が、競技生活の最後の最後、まったく違うフィギュアスケートをもう一度見せてくれたら、どれほどの影響をこの競技に与えたかわからない。もし、それを追求するためにトリプルアクセルが邪魔をするならば、両方を追求することが不可能ならば……最後の年くらいアクセルにこだわらないでほしい、とどうしても思ってしまった。

トリプルアクセルも五輪代表ももはや二の次

 2017-2018シーズン、おそらく日本の女子選手たちは、こぞって巧くなるだろう。たった2つになってしまったピョンチャン五輪の椅子をめぐり、手が届きそうな選手がたくさんいる分、オリンピック代表を競う戦いは、怖いくらい激しくなる。

 男子とは違い、ジャンプ技術にそれほど大きな差がないとなると、誰もが本気で「美しさ」を磨いてくるはずだ。若い彼女たちは、「きれいになりたい!」という意志をもって残された時間を過ごす。そんな戦いのなかで、選手たちは急速に美しくなり、次の全日本選手権は、絢爛豪華な絵巻物のような戦いが見られるはずだ。

 でもその中にあってなお、浅田真央がいれば、 ・・・続きを読む
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筆者

青嶋ひろの

青嶋ひろの(あおしま・ひろの) フリーライター

静岡県浜松市生まれ。2002年よりフィギュアスケートを取材。日本のトップ選手へのインタビュー集『フィギュアスケート日本女子 ファンブック』『フィギュアスケート日本男子 ファンブック Cutting Edge』を毎年刊行。著書に、『最強男子。 高橋大輔・織田信成・小塚崇彦 バンクーバー五輪フィギュアスケート男子日本代表リポート』(朝日新聞出版)、『浅田真央物語』『羽生結弦物語』(ともに角川つばさ文庫)、『フィギュアスケート男子3 最強日本、若き獅子たちの台頭 宇野昌磨・山本草太・田中刑事・日野龍樹・本田太一」(カドカワ・ミニッツブック、電子書店で配信)など。最新刊は、『百獣繚乱―フィギュアスケート日本男子―ソチからピョンチャンへ』(2015年12月16日発売、KADOKAWA)。

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