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Amazonの『ドキュメンタル』大人気(上)

マスメディアよりも会員制メディアの方が格上の時代到来

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 前回は月9『貴族探偵』(フジテレビ系)の敗因について考えた。記事の中ではその要因を女優の人材不足と書いたが、他にも要因として、足かせの多さがある。

  月曜日の夜9時から地上波で全国放送する番組となれば、実験的なことはできないし、スポンサーを納得させるためには出演者もビッグネームを並べないといけない。制作費も減少しているし、また、なによりもコンプライアンスが厳しくなっている。

  10年ぐらい前は各制作会社がNHKの仕事を奪い合っていた。民放と違いNHKは広告収入に依存せず、視聴料で成り立っているから、まだちゃんと制作費が出たからだ。

  しかし、2017年現在、映像制作の世界で勢いがあるのは会員制のメディアである。衛星放送ではWOWOWの評価が高い。小説や漫画の原作者や編集者たちも「映像化するならWOWOWさんにお願いしたい」と口にするのをしばしば耳にする。

  全国放送の地上波に比べたら、WOWOWは視聴者の数は少ない。しかし、WOWOWは映像化作品のクオリティが安定しているので、安心して映像化を任させられるからだ。つまり、多くの人が視聴するマスメディアよりも、質のいい物を作る会員制メディアに、原作者たちも価値を見いだすトレンドになっている。

制作費の潤沢さや規制のなさ

  そして、今、注目を浴びているのが、ネット通販大手のAmazonがプライム会員に向けて配信しているオリジナル映像作品だ。アメリカで制作されたAmazonオリジナルドラマ、『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』『トランスペアレント』はゴールデングローブ賞を獲得し、シリーズ化している。

  日本のAmazonもオリジナル番組配信をはじめて、話題になっている。民放では万人受けを狙うがゆえに、ターゲットが絞れず、視聴率が稼げないという状態にあるが、Amazonはきちんとターゲットを狙える。また、制作費も潤沢のようだ。

  セレブ独身男性ひとりとの結婚を、多数の女性たちが争って狙う『バチェラー』という番組が世界中で放映されているが、これの日本版をAmazonが今年配信した。国内外のリゾート地でゴージャスなデートを繰り広げており、ずいぶんと制作費がかかっている。

  そのAmazonプライムのオリジナル作品で最も人気があると、「日経トレンディ」のポッドキャストで紹介されていたのが、松本人志プロデュース『ドキュメンタル』である。10人のお笑い芸人が6時間スタジオに閉じ込められる。最後まで笑わなかった芸人が優勝という内容だ。各芸人は参加費として100万円を支払い、それをまとめた1000万円が優勝者に渡される。シーズン1が大好評だったのを受けて、先月シーズン2が配信された。

面白いということは最もかっこいいこと

Amazonプライムのバラエティー番組「ドキュメンタル」をプロデュースしている松本人志=2006年、東京都内拡大Amazonプライムのバラエティー番組「ドキュメンタル」をプロデュースしている松本人志=2006年、東京都内
  『ドキュメンタル』の紹介文には「当番組は、番組の性質上、ご覧になられる方によっては一部不適切と感じられる場合がございます」と書かれる。

  地上波ではとうてい放映できないような内容になっているのだ。松本人志は番組の冒頭で「女子供向けではない」と表現しているが、確かにその通りである。下ネタの連続で、芸人がパンツを脱ぐのは当たり前、森三中の大島美幸に至っては自らの母乳を持参し、他の男性芸人たちに飲ませる。

  Amazonのレビューを見ると ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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