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Amazonの『ドキュメンタル』大人気(下)

閉じた空間だからこそステイタス化がしやすい

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 前回からAmazonオリジナル番組『ドキュメンタル』の人気という現象を通して、テレビや映像コンテンツ業界の今について書いている。

  シーズン2の冒頭で松本人志は「Amazonさんに訊いてみると、下ネタに関して相当寛大だということ」「引き(視聴者が食いついてくる)のいいなら、チンチンも大丈夫」とコメントをし、「ああ、本当にAmazonなんだな」と続けた。つまり、現在民放で絶対に出来ないことが、Amazonではできてしまうのだ。

  そして、魅力は下ネタだけではない。

Amazonのマーケティングやブランディングの巧みさ

  なぜAmazonはオリジナル映像配信に力を入れるか。それはプライム会員を獲得するためであろう。今、日本国内では映像配信サービスは淘汰の時期に来ている。いつくかの大手映像配信サービスが終了を明らかにしている。

  その中で、Amazonビデオは巧みなマーケティングでユーザーを囲いこんでいく。『ドキュメンタル』は、私も一気に全部みてしまうほど魅力があり、会費を払ってもみたいと思う。この番組をきっかけにAmaronのプレミアム会員になれば、他の動画もみることができるし、なにより、ダウンロードしてみられるのは利便性が高い。通勤電車の中で、オフラインでもドラマや映画が見られるのだから。

  『ドキュメンタル』の一番の魅力はタイトル通りに、脚本もやらせもなしのドキュメント性だ。その解説はAmazonのレビューをみてもらえればいい。

  ここでは私が面白いと思った「お笑いの構造」が分かるという点で書いていく。私は漫才が好きで、10年ほど前はわざわざ会場に出向いて見ることもあったが、テレビのバラエティ番組をみないので、現在活躍するお笑い芸人が分からない。

Amazonプライムのドキュメンタリー番組「ドキュメンタル」に出演している宮川大輔=2012年、東京都港区拡大Amazonプライムのドキュメンタリー番組「ドキュメンタル」に出演している宮川大輔=2012年、東京都港区
  シーズン1では、私にとって顔と名前が一致するのは宮川大輔とジミー大西だけだった。その中で売れっ子の宮川大輔が率先して、パンツを脱ぐ。彼は“ルミネの楽屋でやっていたゲームをやる”といい、仁王立ちになる。“アナリンピック”というゲームで、一番最初にアナルをみせられる奴が勝ちというゲームだった。宮川はゴールデンタイムでみせる好感度タレントとはまったく違う姿をみせるのだが、これをみると、売れている芸人こそ、守りに入らず、場によってはいくらでも汚れ芸をやるのだなあと感心する。

売れている芸人ほど、貪欲に動く

  シーズン1の成功で、シーズン2は出演者に売れっ子芸人が増える。私でも名前を知っている芸人ばかりになる。シーズン1では単純に“笑わない人間が残る”というシステムだったので、最後まで複数の芸人が残ってしまって勝負がつかなかった。

  そのためルールが変わって、シーズン2では、複数残った場合は、ポイントを一番稼いでいた芸人が優勝という形になった。結果、各自、積極的に敵を笑わそうとする。売れっ子芸人は事前の準備をしてくるし、また、笑いをしかける反射神経が長けている。

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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