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フジテレビのトップ交代の真相(下)

社員に届かなかった亀山社長の鼓舞、期待に応えられなかった現場のエース

川本裕司 朝日新聞社会部記者

常務から社長への昇格が決まり抱負を語るフジテレビの亀山千広氏=2013年5月20日、東京都港区拡大常務から社長への昇格が決まり抱負を語るフジテレビの亀山千広氏=2013年5月20日、東京都港区
 ドラマ「ロングバケーション」のヒットや映画「踊る大捜査線」の成功で実績を重ねフジテレビ社長に2013年に就任した亀山千広氏(60)の退任からは、経営の難しさを改めて思い知らされる。現場を熟知する期待のリーダーがもがき苦しみ、社員への鼓舞が届かなかった4年間だった。

  フジテレビ社長からビーエスフジ社長に転じる人事がすでに発表されたあとの5月26日の定例記者会見。亀山社長は「決算がすべてを物語っている。視聴率の回復を託されながら道筋を作れないまま落ち込んだ責任を痛感している。社内が変わらなければということで退任する」と、潔く4年間を総括した。

  ただ、週刊誌などでドラマなど番組への注文を出してきたと報じられてきたことへの思いが募ったのか、「見た番組に感想を言ったことはあるが、企画や選定の段階で言ったことはない。一切介入してない」と語気を強めた。

  同時に、「制作能力や社員の能力が劣っているわけではない。それを100パーセント最大限に発揮できる環境をつくれなかったことが申し訳なく残念だ。鼓舞したつもりだったが、僕の力不足。改革の道半ばだが、必ずや能力を結集すれば上昇気流に乗れる」と社員への信頼を強調した。

  就任直後、亀山社長は「2年後に視聴率で圧倒的1位、開局60周年(2019年)にはテレビの未来を決めるタイムテーブルをつくる」と豪語し、自信のほどを示していた。

  しかし、起爆剤となるような番組が出てこなかった。毎月一度ある記者会見では、苛立ちや焦りを感じさせる発言も目につくようになっていく。

  「なかなか苦しんでいる。簡単に視聴率が上がるとは思っていない。原因を探っている。おもしろい、新しい、売れるという価値基準でやる。データを見ての番組テコ入れはやめてくれ、と言っている」(13年9月27日)

  「(4月改編は)残念ながら悔しい思いをしている。1年前に比べると平均視聴率が低くなっている。忸怩たる思いだ。リーダーシップを十分発揮できていないと思っている。ジャンプするときにかがむが、上がるときは一気にいくという気持ちだ」(14年7月11日)

  「(10月改編では)どうも結果がついてこない。僕も含めてイライラしているのではないか」(14年11月28日)

  「一つでもヒット番組が出ることで雰囲気が変わる。一個でもヒット番組を出してほしい、と現場に言っている」(16年9月30日)

  「強かったころのフジテレビは、家族そろって見られる番組、コア向けの番組があり、フジのカラーになっていた。試行錯誤してどこの方向に向かっているのかわからないのが一番良くない……(視聴率低下の)責任は僕にある。明快な解を出しているつもりだが、届いていない」(17年2月24日)

  記者会見では、社員を鼓舞する発言もしばしばあった。例えば「僕は制作にいたころ、上の言うことは一切聞かなかった。伝説的な先輩である杉田成道さんの忠告を聞かなかったことがある。ドラマトゥルギーが真逆だから。自分で悩んで作らないと、ヒット番組を作れない」(16年5月27日)

  ヒット作が出にくい要因を問われた際は、「結果がすべて。ただ、 ・・・続きを読む
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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員。10年、論説委員兼務。17年4月から東京社会部。著書に『ニューメディア「誤算」の構造』。共著に『テレビ・ジャーナリズムの現在』『被告席のメディア』『新聞をひらく』。

 

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