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W杯に王手もケガ人続出で深刻なサッカー日本代表

正念場を迎えたハリルホジッチ監督のマネージメント力

増島みどり スポーツライター

イラク戦後半に追いつかれ、厳しい表情のGK川島(右)ら=2017年6月13日、テヘラン拡大イラク戦後半に追いつかれ、厳しい表情のGK川島(右)ら=2017年6月13日、テヘラン
 気温は35度を上回り、湿度は10%台、標高1600メートルの準高地で行われたW杯アジア最終予選対イラク戦(試合は中立地イランのテヘラン)は、今予選のなかでも間違いなくもっとも厳しいアウェー戦となった。低湿度にのどや皮膚の乾燥が激しく、高地の直射日光は肌に突き刺さる。取材でスタンドに座っているだけでも、1リットル以上の水分を補給しなくてはならない。何よりも厳しいのは、すでにW杯出場の望みは絶たれているイラクの、凄まじい闘争心だった。

  最終予選に入ってからのアウェー戦では、ハリルホジッチ監督の「奇襲」ともいえる戦略が功を奏してきた。昨年10月、最終予選の豪州戦では、本田圭佑をワントップに置いて1-1の引き分け。3月のUAE戦では、34歳の今野泰幸を約2年ぶりに代表に復帰させ、攻撃的な位置で起用し2-0と完勝した。

  イラク戦では、中盤にケガ人が多いため、リオ五輪主将の遠藤航、日本代表初先発の20歳・井手口陽介の新鋭ダブルボランチに、FWの原口元気をトップ下に置いて本田をFW右に入れ意表を突いたはずだった。

  前半8分、本田のCKからトップに入った大迫勇也が頭で決めて先制。喉から手が出るほど欲しい先制点で楽になったかに見えた。しかし後半はイラクのカウンターを浴び疲労を重ねるなか、日本の足が先に止まった。

  後半14分、大役を懸命にこなしていた井手口が相手選手と激突し、脳震とうで救急車で市内の病院へ。ここで今野が投入され、25分、「疲労困憊」(監督)と判断された原口に代えて倉田を投入。しかしこの交代が采配ミスとなった。

  後半、右ひざに違和感を抱えていた酒井宏樹が、ボールについていけなくなり自ら交代を要求しているさなか、突破からGK川島と吉田がこぼれ球をお見合い。マハディに同点弾を許すドタバタぶりで、酒井が酒井高徳と交代すると、今度は久保の足がつる。プレーが困難な状況にも交代カード全て使い切り、もはやなす術がなかった。

  ただでさえ一喜一憂の激しい監督が、頭を抱えベンチに座り込んで動かなかった様子が、この引き分けがいかに「負けに近いか」を物語る。選手に戦う姿勢を見せるよう要求するが、負けると誰より落ち込み、下を向いてしまう。分かりやすいのは魅力的だが。

ケガ人続出の原因は選手の過度なストレスか

  何よりもこの試合でもまた一人、勝ち点と引き換えに井手口の犠牲を払う結果となった。最終予選に入ってからだけでも、代表活動中にケガをする選手は異常といえる数に上る。UAE戦で決勝点を決めた今野は試合中に左足小指を骨折。完治の確証がないまま今遠征に参加したが、結局、先発は外れた。7日のシリア戦では、香川真司が試合中に右肩の脱臼で離脱。山口蛍もすねを強打し、イラク戦には間に合わなかった。

  山口、今野を欠いて緊急事態となったボランチで起用された井手口も試合中の脳震とうで退場し、救急車で搬送された。途中交代した酒井宏樹のひざも悪化。どの選手もケガを抱えて代表に来たのではなく、日本サッカーの最高峰の戦いが繰り広げられるべき場でケガをし、離脱している。

  監督が、特に激しいフィジカルの応酬を求めるボランチ ・・・続きを読む
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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

スポーツライター。1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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