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文科省にサヨナラして動物園長になった異色の転身

大阪市立天王寺動物園の園長になって3年、様々な仕掛けを展開する牧慎一郎さん

前田史郎 朝日新聞論説委員

天王寺動物園の牧慎一郎園長=2017年6月8日、大阪市天王寺区天王寺動物園の牧慎一郎園長=2017年6月8日、大阪市天王寺区
 20年近くの官僚人生にきっぱり別れを告げ、動物園の園長に転身した人がいる。大阪市立天王寺動物園の牧慎一郎さん(46)。3年前、市の幹部ポスト公募に手をあげ、出身地でもある大阪へ赴任した。以来、次々と大胆な改革をしかけて入園者数をV字回復させ、今や名物園長として知られる。中央省庁のキャリア官僚がなぜ動物園なのか。官僚生活や動物園改革の将来などについて聞いた。

  --大学院を出て科学技術庁(現文部科学省)に入り、官僚人生を順調に送っておられました。突然、動物園の世界へ飛び込んだ理由はなんですか。

 子供のころから動物園に特別な関心があったわけではありません。大学時代の専門は生物学ですが、生態学や分類学など動物園らしい生物学は一切勉強してません。動物園マニアになったのは、就職して5年くらい経ってからです。

 妻がペンギン好きで、その影響で「ペンギンたちの不思議な生活」という本を読み、ペンギンに関心を持って動物園や水族館をめぐり始めたところからマニアになっていきました。動物園マニアの活動をしている中で、いつか動物園にかかわる仕事がしたい、とは密かに思っていたのですが、大阪市が動物園改革担当部長を公募している、とマニア仲間のフェイスブックで知った。大阪市のホームページをのぞくと、仕事は企画・広報やサービス改善、将来計画の策定……。これはまさにぼくの仕事やん、と思いました。それも地元大阪!

 --官僚時代から動物に関する活動をしていたのですか。

 「ペンギン会議」というグループがありまして、これは日本全国のペンギン飼育係のネットワークをベースにしつつ、一般のペンギンマニアも一緒に加わってペンギンについて考える会です。ある時、飛び入りで参加したら有名なマニアに会えたり、飼育の裏話を聞けたり。なにこの面白い世界は、と色めきたち、ボランティアとして手伝うようになりました。

 その後、「市民ZOOネットワーク」というNPO法人を手伝うようになりました。これは動物園での優れた取り組みを表彰する「エンリッチメント大賞」を運営するグループで、2003年から07年には代表を務めました。横浜市や名古屋市の動物園の運営にかかわる有識者委員会で「市民代表」として意見を述べました。本職はごりごりの役人だったんですけど。

 --テレビの動物園クイズで優勝されたそうですね。

 私がZOOネットの代表をしていた35歳のときです。テレビ東京の「TVチャンピオン」という番組で、

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