メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

日本スポーツ界の不祥事に歯止めをかけられるか

2020年に向けて「スポーツ・コンプライアンス教育振興機構」が発足

増島みどり スポーツライター

  かつては、もしスポーツ界で不祥事が起きようものなら、その扱いもセンセーショナルだった。スポーツ組織や、スポーツ選手が「問題に関わるはずがない」といったポジティブな先入観が浸透していたからこそ、衝撃や驚きが増す。スポーツが、選手が、社会やファンからどれほど愛され、信頼されていたかの証しだろう。

  ところが最近相次ぐスポーツ界の不祥事に、世間もファンも「またか」と慣れてしまったような空気を感じる。交通事故や飲酒、暴力といった以前に主だった事件、問題は今や賭博、差別、薬物と類が異なっているのも大きな特徴である。

  6月29日、2020年の東京五輪を迎える日本のスポーツ界が「またか」と思われるような不祥事の連鎖を止め、さらに子どもたちに教育を行うため「スポーツ・コンプライアンス教育振興機構」(武藤芳照理事長)が発足し、記念会が都内ホテルで行われた。株主総会が集中した日の、しかも会費制での会だったが350人を超える関係者が参加し、スポーツ庁・鈴木大地長官も冒頭で力強くこうあいさつをした。

  「20年東京に向かって、スポーツの高潔性を日本がリーダーとなって世界に示さなくてはいけない。メダルの数でも色だけでもなく、高潔性でのチャンピオンを目指したい」

鹿島戦で暴言を吐いたとして2試合の出場停止処分を下された浦和の森脇(左から2人目)。鹿島の小笠原がレオシルバ(4)に対する侮辱的発言があったと訴えた=2017年5月4日、埼玉スタジアム2002拡大鹿島戦で暴言を吐いたとして2試合の出場停止処分を下された浦和の森脇(左から2人目)。鹿島の小笠原がレオシルバ(4)に対する侮辱的発言があったと訴えた=2017年5月4日、埼玉スタジアム2002
  会場に集まった関係者の熱気はそのまま、スポーツ界の強い危機感を表すものだったのかもしれない。村井満チェアマンが28日、Jリーグの幹部がセクハラ・パワハラを行ったと処分を発表。事実関係は不明な点も多いが、組織のガバナンス(統治)も問われる。

  J2でボールボーイへの暴力、J1浦和対鹿島戦で起きた差別発言、とサッカー界はピッチでの問題が多発し、29日にも天皇杯で京都の選手が、J3沼津の選手を見下す発言をしてこれも罰金と出場停止になった。

  スキー連盟で起きた未成年の大麻、飲酒、昨年のバドミントンの違法賭博への関与、男子バレーボール日本代表監督の人身事故(書類送検)など、リオデジャネイロ五輪を挟んだこの1年でも問題はやまない。

  企業では近年徹底され始めた「コンプライアンス」(法令遵守)を、スポーツ界にも深く、広く浸透させなくてはならない。こうした関係者の危機感や期待を背景に「教育」の文字を盛り込んだ点が新しい。

付け焼き刃で対応するのではなく、子どもたちへの教育を重視

  問題は、不祥事が繰り返される点だ。

  多くの競技団体は1964年の東京五輪を機に、事務局機能、組織図を整備しており半世紀が経過している。選手教育を専門とする部門の設置や人員をまかなうための運営に時間も経費もさけず、ある意味現場に「丸投げ」になってしまう。一方、かつての若年層とも違う。若い頃から海外遠征や国際試合の経験を豊富に持ち、年配者に厳しく教わるといった風習はないに等しい。

  現在は各団体が事件や問題があるたびに ・・・続きを読む
(残り:約1159文字/本文:約2404文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

スポーツライター。1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

増島みどりの新着記事

もっと見る