2020年に向けて「スポーツ・コンプライアンス教育振興機構」が発足
2017年07月10日
かつては、もしスポーツ界で不祥事が起きようものなら、その扱いもセンセーショナルだった。スポーツ組織や、スポーツ選手が「問題に関わるはずがない」といったポジティブな先入観が浸透していたからこそ、衝撃や驚きが増す。スポーツが、選手が、社会やファンからどれほど愛され、信頼されていたかの証しだろう。
ところが最近相次ぐスポーツ界の不祥事に、世間もファンも「またか」と慣れてしまったような空気を感じる。交通事故や飲酒、暴力といった以前に主だった事件、問題は今や賭博、差別、薬物と類が異なっているのも大きな特徴である。
6月29日、2020年の東京五輪を迎える日本のスポーツ界が「またか」と思われるような不祥事の連鎖を止め、さらに子どもたちに教育を行うため「スポーツ・コンプライアンス教育振興機構」(武藤芳照理事長)が発足し、記念会が都内ホテルで行われた。株主総会が集中した日の、しかも会費制での会だったが350人を超える関係者が参加し、スポーツ庁・鈴木大地長官も冒頭で力強くこうあいさつをした。
「20年東京に向かって、スポーツの高潔性を日本がリーダーとなって世界に示さなくてはいけない。メダルの数でも色だけでもなく、高潔性でのチャンピオンを目指したい」
J2でボールボーイへの暴力、J1浦和対鹿島戦で起きた差別発言、とサッカー界はピッチでの問題が多発し、29日にも天皇杯で京都の選手が、J3沼津の選手を見下す発言をしてこれも罰金と出場停止になった。
スキー連盟で起きた未成年の大麻、飲酒、昨年のバドミントンの違法賭博への関与、男子バレーボール日本代表監督の人身事故(書類送検)など、リオデジャネイロ五輪を挟んだこの1年でも問題はやまない。
企業では近年徹底され始めた「コンプライアンス」(法令遵守)を、スポーツ界にも深く、広く浸透させなくてはならない。こうした関係者の危機感や期待を背景に「教育」の文字を盛り込んだ点が新しい。
問題は、不祥事が繰り返される点だ。
多くの競技団体は1964年の東京五輪を機に、事務局機能、組織図を整備しており半世紀が経過している。選手教育を専門とする部門の設置や人員をまかなうための運営に時間も経費もさけず、ある意味現場に「丸投げ」になってしまう。一方、かつての若年層とも違う。若い頃から海外遠征や国際試合の経験を豊富に持ち、年配者に厳しく教わるといった風習はないに等しい。
現在は各団体が事件や問題があるたびに
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