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「残業削減」で伸びる会社と潰れる会社(下)

仕事を持ち帰れるか否かで、「残業」の意味は変わってくる

杉浦由美子 ノンフィクションライター

  前回はなぜ残業を減らした方がいいかの理由について言及した。仕事だけしていればいい時代は終わり、現在は社会人になっても語学や経済、ITなどについての勉強をし続けなくてはならない。人手不足で職はたくさんがあるが、一定以上の収入を維持するためには勉強が必要な時代になっている。

  今回は残業を減らす動きは実際の業務にはどう影響がでているのかを見てみよう。

家で仕事をした方が効率は良い

  残業時間を減らせと言うが、仕事の量は少なくならない。そのため、多くの人たちは、定時で会社を出ても、持ち帰って仕事をしている。

 ようは労働時間の長さは実質的に変わってないのでは? という批判もでてこよう。

シティホテルのラウンジ=2013年、大阪市北区拡大シティホテルのラウンジ=2013年、大阪市北区
 この10年で東京に増えたのは、有料学習室やカフェで仕事をする会社員の姿だ。シティホテルのラウンジでパソコンを開いて仕事をしている人も目立つ。コーヒー1杯で1500円ほど払わなくてはいけないが、「ほどよく静かでWi-Fi完備で何時間いても後ろめたくない。その環境を買うなら決して高くない」というのが利用者の発想だ。

  有料学習室も増えていて、そこでは語学や資格試験などの勉強をする人もいるが、仕事をする人も増えている。中央線の武蔵境駅前の公共図書館では4時間で400円の有料ワーキングスペースがある。高級な机や椅子が置かれ、快適に仕事ができるため、土日は仕事をする人たちで満席になる。

  つまり、この10年で残業は減ったが、持ち帰りの仕事は確実に増えている。しかし、当事者である会社員たちに意見を求めると「残業をしないで、持ち帰りをした方が絶対に労働時間は減る」という意見も多いのだ。

若手社員は残業して得はない

  私も会社員の経験があるから実感として分かるのだが、残業は実に効率が悪い。特に下っ端社員は残業をしても良いことはない。

  メーカーでITシステムの営業をしている女性(20代)の場合を紹介しよう。昼間はクライアントと打ち合わせをし、夜は企画書や見積もりを作る作業をする。

  「会社で残業をしていると、電話を取ったり、上司や同僚に話しかけられたりして、作業に集中できない」
もっとも負担になるのは、イレギュラーな仕事を押しつけられることだ。

  事務職の派遣社員たちは定時に帰ってしまう。その後に本来派遣社員がやる仕事が発生すると、上司は若手の女性社員にその作業をさせるのだ。

  「会議用の資料を作成したり ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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