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サニブラウンが世界陸上で見せた可能性

日本の男子短距離史上初の3人準決勝進出、国際舞台での決勝進出と9秒台への現在地

増島みどり スポーツライター

世界陸上男子100㍍準決勝のゴール後、悔しがるサニブラウン・ハキーム(左)=2017年8月5日、ロンドン拡大世界陸上男子100㍍準決勝のゴール後、悔しがるサニブラウン・ハキーム(左)=2017年8月5日、ロンドン
 朝晩の気温差が激しく、雨が降りしきる大会6日目(ロンドン9日=日本時間10日早朝)200メートル準決勝に出場したサニブラウン・ハキ―ム(18=東京陸協)は、8コースでスタートを切った。メダル候補、ジャマイカのヨハン・ブレイクが視界に入らず落ち着いて自分の走りに集中。直線に入ってもブレイクらが上がらず組2位で(20秒43、向い風0.3メートル)、2003年パリの末続慎吾(37=当時東海大)以来14年ぶりとなる世界陸上決勝進出を果たした。

  「ラッキーって感じですね。最初の100メートルに集中できたのは良かった。タイムも(良くない)タイムなんで(自己ベストは10秒32)決勝はここからもう一段上げて行きたい」

  初出場だった100メートルではスタート直後、4歩目でつまずくミスに「いやぁー、盛大にやらかしましたねぇ」と笑ったが、200メートルではどこか余裕も漂った。同種目ではウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)が18歳11カ月で決勝進出。18歳5カ月でその最年少記録も更新した。 

  100メートル予選では「背中が大きく膨れるようになって足が出ていた」(サニブラウン)ため、中1日のわずかな時間で、決勝進出をかけてコーチとその修正に取り組んだという。万全で臨んだはずの準決勝2組目、4歩目で大きくつまずくミスをしたため、修正したはずの加速をできないまま10秒28の平凡なタイムで準決勝敗退が決まった。

  サニブラウンが「(ミスで)気持ちが切れてしまった部分もあった。そういうメンタル面も次につなげたい」と話す様子を目の前で取材しながら、決勝進出への大きな可能性と、しかし世界の競争とは記者のそんな希望的観測を叶えてくれるほど甘いものではないのだと、改めて思い知らされた。

  激戦となった今年6月の日本選手権を制し日本チャンピオンとして臨んだサニブラウンは予選2組目で、優勝候補の一角とも言われたヨハン・ブレイク(ジャマイカ)と同走し、予選全体でも6位となる自己記録タイの10秒05で1位通過。

  ケンブリッジ飛鳥(24=ナイキ)は9秒台が3人入る難しい組ながら10秒21で4位に。多田修平はウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)の隣のコースを走り、10秒19で4位と持ち味のスタートの鋭さで存在感は発揮した。多田とケンブリッジは、順位ではなく記録上位6人に入り、3人が準決勝に進出を果たす日本勢としての快挙を果たした。

米フロリダ大に進学するサニブラウンらの環境作り

  3人準決勝とはいえ、日本より先に9秒台をマークしている中国の蘇は今回も決勝に進出しており、日本は後を追う。

  注目を集めたのは、今秋から米フロリダ大へ進学するサニブラウンと、米国人でトップ選手を指導するレイダーコーチが世界舞台で共に行動した様子だ。全米体育協会の規則で、大学入学前の学生が大学の指導を受けるのは禁じられている。このためサニブラウンも準備期間としてオランダに拠点を移し、城西高校を卒業した春から同コーチの指導を受ける。

  拠点のひとつアーネムはオランダスポーツのいわば総本山として強化を行う「トレセン」がある場所だ。ここで国籍に関係なく手厚いサポートで支えられる理由は、日本陸連とJSC(日本スポーツ振興機構)のタッグと潤沢な資金にある。

  日本陸連は20年東京五輪を見据え、若手でメダル獲得の可能性がある選手を「ダイヤモンド・アスリート」に指定し、より良い環境を提供するプロジェクトを展開する。またJSCも20年に向けて有望な若手選手を「海外で」集中的に強化する事業を行う。

  卓球の世界選手権で活躍した張本智知、平野美宇 ・・・続きを読む
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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

スポーツライター。1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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