メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

世界陸上男子50キロ競歩で銀・銅・5位の快挙

東京五輪金メダルに前進した「競歩大国」の舞台裏を、今村文男・五輪強化コーチに聞く

増島みどり スポーツライター

世界陸上の50キロ競歩で銀メダルを獲得した荒井広宙(左)と銅メダルとなった小林快=2017年8月13日、ロンドン・バッキンガム宮殿前拡大世界陸上の50キロ競歩で銀メダルを獲得した荒井広宙(左)と銅メダルとなった小林快=2017年8月13日、ロンドン・バッキンガム宮殿前
 ロンドン世界陸上男子50キロ競歩(8月13日)はラスト2周に入り、日本勢2人がメダルを獲得する史上初の快挙が目前だった。

  「気持ちのいい、ウイニングウォークだね」

  昨年のリオ五輪では4位の選手が接触で抗議、一時は銅メダルから失格とされかけた荒井広宙(ひろおき、29=自衛隊)は堂々の銀メダルをほぼ手中にし、隣で銅メダルに向かって歩く小林快(24=ビックカメラ)に話しかけたという。50キロはまだ2度目だった小林も「はい、本当ですね」とうなずきかけた時、沿道のスタッフから「ウクライナが、10秒差だよ!」と、4位がわずか10秒差に迫っている緊急事態を知らされ、慌ててペースアップし逃げ切った。

  帰国した15日の会見、快挙の陰にあったこんなエピソードを2人は笑顔で披露した。

  競歩は、50キロもの距離で歩型を判定する審判との戦いでもある。ルールにある「ロスオブコンタクト」(どちらかの足が接地している)「ベントニー」(前足が接地してから垂直になるまでヒザを伸ばす)は3回の警告で失格。小林はレース中、注意と警告を一回ずつ受けている。キャリアが浅ければ、慌ててリズムを崩してもおかしくない。

  「(注意と警告を受けた)レース中、荒井さんにまだ1枚、大丈夫だから落ち着いて、と声をかけてもらって冷静になれました」

  小林はそう話し感謝する。

  2015年北京世界陸上ではこの種目、日本人初のメダル(銅)を谷井孝行(自衛隊)が獲得し、昨年の五輪で荒井が銅。今大会は主要国際大会3大会連続メダルと同時に、初の複数メダル、さらに5位に丸尾知司(25=愛知製鋼)が食い込み3人が入賞を果たした。04年アテネ五輪の女子マラソン以来(野口みずき金、土佐礼子5位、坂本直子7位)の全員入賞の快挙だ。

  荒井が、若い小林に「まだ大丈夫」と声をかけたのはもちろん経験値からだけではない。「歩型違反」なく複数、しかも3人が入賞できたのには(複数入賞は日本だけ)明確な理由がある。さらに言えば日本競歩陣が世界をリードする大国となり、日本陸上界をけん引する理由を、「大丈夫、まだ1枚だから」の一言が象徴していたのかもしれない。

3人失格の悲劇から、世界基準へと磨いた歩型の技術

  今村文男・日本陸連競歩五輪強化コーチ(50=富士通)は、かつては世界に大きく離された日本競歩界を、最多となる7度の代表としてリードしてきたパイオニアでもあった。91年、台風通過直後に行われた酷暑の東京世界陸上 ・・・続きを読む
(残り:約1654文字/本文:約2741文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

スポーツライター。1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

増島みどりの新着記事

もっと見る