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「大阪都構想」を訴えてきた維新、原点を見失うな

堺市長選で看板政策を封印し争点にしない大阪維新の会

前田史郎 朝日新聞論説委員

 奇妙な話である。地域政党・大阪維新の会が、大阪都構想を争点にしていない。

堺市長選に向けた公開討論会の終わりに握手する竹山修身氏(左)と永藤英機氏=2017年9月7日、堺市中区堺市長選に向けた公開討論会の終わりに握手する竹山修身氏(左)と永藤英機氏=2017年9月7日、堺市中区
 9月10日に告示された堺市長選。3選をめざす竹山修身市長(67)=自民、民進、社民、日本のこころ推薦=と、維新の新人で元府議の永藤英機氏(41)の一騎打ちだ。告示当日の朝、堺市の南海堺東駅前で永藤氏の演説を聴いたが、氏は都構想に一言も触れなかった。自身の公約にさえ、都構想を盛り込んでいない。

  「みなさん、争点はただ一つ。堺の停滞か、成長かです」

  約50人の聴衆の前で、声をからすが、どこか物足りない。

  都構想は、広域行政を「都」に集約し、二重行政のむだをなくすのが狙いだ。堺市は大阪市に次ぐ人口84万人の政令指定都市。東京都をモデルに、大阪、堺両市を特別区に再編するのだから、堺市は構想を実現させるために欠かせない存在のはずだ。

  4年前の堺市長選で、維新は都構想をかかげて闘った。これに対し竹山氏は「堺をなくすな」と反対キャンペーンを展開。維新は完敗を喫した。この負けは、2年後の住民投票で都構想が否決されるきっかけになった、とも言われた。今度は前轍を踏まぬということか。市長の報酬レベルや野合批判などの追及に終始する。

  しかし、である。重要な選挙で看板政策を掲げないのは、政党としてどうなのか。

  竹山陣営は、維新の作戦を「まやかし」と批判、マニフェストでも「都構想に再びNOを」と掲げる。

  都構想は大阪維新の会にとって結党の理念であり、「一丁目一番地」だ。選挙に勝たないとその実現は難しいということかもしれない。だが、目先の勝利のため大事な原点を隠してまで闘う姿勢には、改革勢力としてかつて大阪を席巻した勢いは感じられない。

          ■

  大阪府・市の両議会では今、維新が再挑戦をめざす都構想実現のための「特別区」制度と、市を解体せずに人口30万人規模の8区に集約する「総合区」の2案の議論がはじまっている。

  大阪市を4~6程度の特別区に再編して中核市並みの権限を与え、区長や区議を選挙で決めるのが都構想だ。これに対し、総合区は市を廃止せず、区長を市議会の同意で決める。区長には予算案に意見を述べる権利が与えられるとはいえ、区は市の内部組織のままで、都構想とは根本的に発想が違う。

  総合区は、公明党が実現をめざしている。維新はあくまで特別区支持だが、

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