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「安倍1強」への“気づかい”支配にほころび

テレビの2017総選挙報道、討論番組は活発化、欲しい大胆な争点の提起

水島宏明 ジャーナリスト、上智大学文学部新聞学科教授

拡大街頭に立つ(左から)松井一郎・大阪府知事、小池百合子・東京都知事、河村たかし・名古屋市長=10月7日、東京都中央区

テレビの選挙報道はドラマチック! バラエティー番組まで取り上げる

 私はテレビ報道の最前線の仕事から大学教員への身を転じた人間である。このため、テレビ報道のあり方には、人一倍関心を持ってウォッチしている。特に選挙の時期には時々の「人気」や「風むき」、あるいは「気づかい」「自己規制」などの要素に左右されがちなテレビメディアの選挙報道を、ウォッチしてきた立場で2017総選挙の報道について、以下記していきたい。

 最初に記しておきたいのは、これまで堅いと思われてきた政治や選挙に関する報道がテレビの一般視聴者から見て「面白い」と思える状況になってきていることだ。良し悪しは別として、政治とそこに国民が意思を示す最も重要な節目である選挙がドラマチックなものになっている。

 森友学園、加計学園などの疑惑に伴う安倍政権の疑惑、さらに「このハゲーっ!!」という強烈な自民党の豊田真由子議員の秘書へのパワハラの怒声、民進党のジャンヌ・ダルクと呼ばれた山尾志桜里議員の不倫疑惑、民進党からの離党ドミノ、北朝鮮によるミサイルと核兵器の脅威の増大などの間隙を縫ったような安倍首相による「臨時国会冒頭での解散」と総選挙。安倍晋三首相の解散についての記者会見にタイミングを合わせたような小池百合子・東京都知事による「希望の党」の旗揚げ、さらに民進党の「合流」と小池代表による“踏み絵”と「排除」での民進党の3分裂。

 毎日のようにドラマチックな出来事が起こり、それに関連して、小池知事や安倍首相、あるいは小泉進次郎自民党筆頭副幹事長などが発言して、対立構図が鮮明になる・・・。こうした動きをいわゆるニュース番組や報道番組だけでなく、ワイドショーと呼ばれる情報番組に加えて、各局がバラエティーに位置づけている番組も大きく扱っている。例を挙げるならバラエティー番組に属するTBSの「サンデー・ジャポン」、テレビ朝日の「ビートたけしのTVタックル」、フジテレビの「バイキング」などの番組群だ。

 特に民放テレビは現金なものである。どういうテーマであれば視聴者が関心を持つかを冷静に注視し、視聴率が上がるようであればそれを扱う。「サンデー・ジャポン」では小池氏が都知事選に出馬するきっかけを作った前知事の舛添要一氏を「ご意見番」として登場させて小池氏の手法を批判させている。「お前が言うな」などの視聴者からのツッコミも紹介しているところは笑える要素になっている。また「ビートたけしのTVタックル」では、前宮崎県知事の東国原英夫氏をゲストにして、「希望の党」の総理候補が未定になっている点を伝えつつ、東国原氏は「小池さんが都知事を辞めたらお前が出るのか?」などと師匠のたけしに突っ込まれて笑いを取っている。

 このように「政治」のテーマが盛り上がるのは2009年に民主党政権への政権交代につながった総選挙以来の熱気だと感じられる。

小池百合子・都知事がテレビ報道の中心に!

 9月17日(日)の新聞朝刊各紙が一斉に「臨時国会冒頭での解散・10月総選挙」について報じて以来、新聞もテレビも総選挙に向けて走り出している。

 9月25日(月)に安倍首相が解散総選挙を実施する旨の記者会見を行って、いわゆる「事実上の選挙戦」に突入した。9月28日(木)に実際に衆議院の解散が行われて、「事実上の選挙戦が本格化」。そして、「公職選挙法上の選挙戦」は10月10日(火)の公示からスタートし、22日(日)の投開票日まで続くことになる。この法律上の「選挙期間」は各局も法律を意識して「公平中立公正」を強く意識して報道する時期だ。つまり、10月9日(月)より前の段階では、こうした意識はそれ以降よりも強くはない。とはいえ、各局各番組ともに公示が近づいてくるに連れて、1人の候補予定者を露出させる場合は同じ選挙区の他の候補予定者も露出させるなど、特定の候補予定者だけを利することがないように配慮するようになっていく。

 10月9日(月)午前のこの原稿の執筆段階では、「希望の党」の代表である小池百合子・都知事が衆院選に出馬するのかどうかまだ不明ではあるが、公職選挙法が強く意識される「公示前」の各局の報道ぶりを見る限り、安倍晋三VS小池百合子の構図で各番組が報道するようになっていて、劇場型の報道の様相を強く見せている。

 筆者は昨年(2016年)の参議院選挙の情報番組や報道・ニュース番組について、「選挙期間中」の放送時間について調査したが、計測してみると、夕方の時間帯の民放ニュース番組では、「参院選」と「知事選」(誰が候補になるかも含めた報道)の比較では「知事選」は前者の倍の差、局によっては3倍ほどの差があった。2016年は参院選の後に行われた知事選で小池氏が圧勝したのだが、その時に観測されたテレビの「劇場型報道」は今回、衆院選にも引き継がれ、小池氏を中心にした劇場型の報道になっている。9月17日から10月9日までの各局各番組を見てみると、 ・・・続きを読む
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筆者

水島宏明

水島宏明(みずしま・ひろあき) ジャーナリスト、上智大学文学部新聞学科教授

1957年生まれ。札幌テレビ、日本テレビでテレビ報道に携わり、ロンドン、ベルリン特派員、「NNNドキュメント」ディレクター、「ズームイン!」解説キャスター等の後、法政大学社会学部教授を経て16 年4 月から現職。主な番組に「ネットカフェ難民」など。主な著書に『内側から見たテレビ』など。「ヤフーニュース・個人」で報道に関する記事を発信中。

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