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[2]練習から意識かえ修正力向上、メンタル鍛錬

山﨑浩子強化本部長は「新体操に全て捧げられる人」だけを指導する

増島みどり スポーツライター

選手に指示を出す新体操の山﨑浩子強化本部長=2016年1月14日、東京都北区拡大選手に指示を出す新体操の山﨑浩子強化本部長=2016年1月14日、東京都北区
  新体操の世界選手権(イタリア)団体総合で銅メダルを獲得するなど、史上最多4個ものメダルを手にしたばかりの新体操「フェアリー(妖精の意味)ジャパンPOLA」(現在11人)に、羽を休める時間はなかった。

  通年合宿を行う国立スポーツ科学センター(略称JISS、東京・北区)にある新体操専用の競技場では、選手たちがリラックスした様子で準備のための柔軟体操を始めていた。練習前の静かなマットの上ではスマホを見ている選手もいるし笑い声も響く。

  しかし年頃の女性たちがどんなにくつろぐ様子に見えたとしても、日本が誇る「美の集団」には、どこか張りつめた、同時に見る者を惹き付ける緊張感が常に漂う。優雅な立ち振る舞いのためなのか、練習でもいい加減にはしないヘアメイクの力か、それとも、チームに芽生え始めた世界の強豪を捉えた自信が理由なのだろうか。

  女性リーダーが女性チームを指導し世界の強豪に押し上げる。何か特別な手腕を期待してしまうが、山﨑浩子強化本部長(57)は「女性だけの世界で女性リーダーとして、と聞かれてもピンと来ませんよね。考えたこともない」と軽やかに笑い飛ばす。

  男性の指導者が行えばクローズアップされそうな「女性への定番指導」は一切しない。よほどの場合でなければ悩んでいる選手を部屋に呼んで、面談するようなことはまずない。サブの選手により多く配慮し、動機付けをしたり、ホームシックを気にかけたりもしない。

  「心のプロフェッショナルとして自分自身を律し、新体操に全て捧げられる人以外、このマットに立ってはいけません。できないなら帰ってもいいのですから」

  山﨑の指導方針はただそれを徹底するだけだからという。体育館を包み込む心地よい緊張感は、指導された結果ではなく、10代から新体操に全てを捧げた彼女たちが自身たちで育てた凛とした空気にある。東京五輪での悲願の表彰台に大きく前進した新体操界、山﨑の「現在地」を聞いた(インタビュー9月23日、敬称略)。

いつでも定位置に来る、と決めつけない

  ――2015年の世界選手権で団体総合5位、団体リボンで銅メダル、個人総合でもリオ五輪枠を獲得する躍進を遂げた際にも取材でここに伺いましたが、以前とはまた違う充実した雰囲気を感じます。

  山﨑 世界選手権の前、まず6月のアジア選手権(カザフスタン)で団体総合、種目別2種目で優勝し、その後の「チャレンジカップ」でもスペイン、ベラルーシ、世界選手権前最後のロシア大会まで全てで表彰台に立った自信はとても大きかったと思います。以前はどこか ・・・続きを読む
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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

スポーツライター。1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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