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なぜ女芸人が面白くなってきたのか(上)

夫婦漫才から遠く離れて 「メイプル超合金」「相席スタート」の新しさ

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 日本テレビが今年度から『女芸人No.1決定戦 THE W』を開催する。優勝賞金1000万円をかけて、アマチュア・プロ関係なく多くの女芸人たちが競い合う。このような大会が催されるのは、それだけ女芸人が今盛り上がっているからだ。『24時間テレビ』(日本テレビ系)でマラソンを完走したブルゾンちえみを筆頭に注目される女芸人は実に多い。痛々しさやマイノリティ感がまったくないのが、現在の女芸人のトレンドで、同性としても非常に好感が持てる。

  お笑いの世界は典型的な男社会であったが、どうして、ここに来て女芸人が活躍できるようになってきたのか。
1回目では漫才の男女コンビの変化をみることで、時代と女性を考えていきたい。

セクハラ芸はもう通用しない

  先月、「極楽とんぼ」の山本圭壱の復帰について書いた。彼は彼で実力のある芸人だ。その彼がテレビで復活するのに障害になっているのは、過去の不祥事よりも、実はお笑い業界のトレンドの変化ではないのだろうか。

  彼が活躍したのは2000年前後でテレビもお笑い業界もコンプライアンスが緩かった。山本は女性蔑視的な発言をして、女性の共演者に嫌そうな顔をさせる。そういうセクハラ芸の達人だった。批判しているわけではない。私は彼の芸風が嫌いだったが、あれはあれで完成された芸であり、彼のセクハラ芸を面白がる視聴者が沢山いて、だから、彼は売れっ子だったのだから。その彼が今、テレビに復帰をするための最も大きい障害は、彼の十八番のセクハラ芸が通用しなくなっていることのようにも見える。

  山本が売れっ子だった頃は、多くのバラエティ番組がセクハラを売りにしていて、その中で、女芸人たちの役割は、「いじられるブス」という立ち位置だった。1990年代にナインティナインの番組『めちゃ×2イケてるッ!』で、女性タレント2人と光浦靖子が『キャッツ・アイ』(北条司による漫画・美人3姉妹盗賊の活躍を描く)のパロディを披露する企画が大人気だったが、その中で光浦は他の美女2人と差別され、虐げられる役割だった。私は見ていると嫌な気分になりチャンネルを変えたが、それを楽しむ視聴者も多かったわけだ。

イケメンの相方と並ぶことで自分のブスさを引き立てる

  しかし、現在、テレビの中で「ブスいじり」企画はあまり見なくなった。コンプライアンス意識が高まったこともあるが、それ以前に、ブスをブスと罵るという単純さが通用しなくなったのだと思う。それにより女芸人のメディアでのあり方も変化し、男女の漫才コンビのあり方も進化する。その走りが『M-1グランプリ2004』で準優勝した「南海キャンディーズ」だろう。審査員の中田カウスが山里亮太の相方、山崎静代の扱い方が紳士的で良いという主旨を評した。

  そして、現在、注目の男女コンビといえば、『M-1グランプリ2016』で決勝進出した「相席スタート」だ。M-1では審査員の上沼美恵子が「男女のコンビは難しいのによく成功させている。女の方は ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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