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採点スキャンダルがもたらした新4回転時代

2002年ソルトレイクシティ五輪ペア王者が語る技術の進化

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

ジェイミー・サレ&デイビッド・ペレティエ拡大技術の進化について語ったジェイミー・サレ(左)&デイビッド・ペレティエ=撮影・筆者
 フィギュアスケートGP(グランプリ)シリーズ第2戦、スケートカナダが開幕する前日の10月26日、会場のブラントセンターで、カナダチームの事前記者会見があり、2002年ソルトレイクシティ五輪ペア王者のジェイミー・サレ&デイビッド・ペレティエが登場した。特別ゲストとして、進行役を務めた二人は、会見終了後、短い時間ながら単独取材に応じた。

 この15年前の五輪ペアチャンピオンは、実は現在のフィギュアスケートを語るにおいて重要なキーパーソンである。国際スケート連盟(ISU)創設以来、100年以上続いてきた6点満点採点システムが、2004年に現在の採点方式に変わった原因に、彼らが大きく関わっていたのである。

 「関わっていた、というのは偶然にすぎません。あれはどの選手にも起こりうることでしたから」とペレティエは口を開き、ちょっと苦笑した。

 旧採点方式が見直される直接の原因になったのは、2002年ソルトレイクシティ五輪のペア採点疑惑である。この大会のペアは、カナダのサレ&ペレティエと、ロシアのエレーナ・ベレジナヤ&アントン・シハルリーゼの間で優勝が競われた。

ソルトレーク冬季五輪/採点疑惑で改めて行われたフィギュア・ペアの表彰式で、金メダルを手にするカナダのジェイミー・サレー、デービッド・ペルティエ組(右)とロシアのエレーナ・ベレズナヤ、アントン・シハルリゼ組=代表撮影拡大2002年ソルトレイク五輪のフィギュア・ペアの表彰式。カナダのジェイミー・サレ、デイビッド・ペレティエ組(右)とロシアのエレーナ・ベレジナヤ&アントン・シハルリーゼ組の2組に金メダルが渡された=代表撮影
 フリーをノーミスで滑り切ったカナダの組が銀メダル、小さなミスが一つあったロシアの組が金メダルになった。だが試合後のミーティングでフランスのジャッジが「圧力を受けてロシアに入れた」と発言したため、3日後にカナダのペアにも金メダルが授与された。要約すれば、そういう事件である。

 この事件をきっかけとして、もっと主観が少なく、不正を簡単にできない採点方式を望む声が高まり、急ピッチで開発されて2004年に施行されたのだ。

現在の採点方式がもたらした進化

 「フィギュアスケートに限らず、競技スポーツではルールが変われば選手はそれに合わせて順応していくというのは、ごく当たり前のことです」とペレティエ。「すべてのスポーツについて言えることですが、現在のトップスケーターたちは私たちが現役のころに比べて、肉体的にも強靭になり、技術も格段に進歩してきました」とサレが続けた。

 当時のペアでは、トップチームでも二つ目のサイドバイサイドのジャンプは2アクセルで十分だった。現在は3トウループのコンビネーションと3サルコウを入れるのが普通で、中にはメーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード(カナダ)のように3ルッツを入れる組もいる。

 こうした技術の向上は、現在の採点システムがもたらしたものが大きいことは、彼らも同意する。

 「その良い例が ・・・続きを読む
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筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書に、『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』、『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

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