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『M-1』に新しさを求めるのは間違いか?(中)

イケメンボケというトレンドの怖さ、決勝戦は準決勝までとは別物

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 『M-1グランプリ2017』について書いている。

 前回は参加資格が結成10年以内から15年までに変更されたことで、技術的なレベルが高くなりすぎて、下手だけど新しくて面白い漫才コンビが決勝まで残れないという悲劇について書いた。

  今回は『M-1』決勝戦の傾向と対策について考えたい。今年、初のファイナリストたちも結果で明暗が分かれた。現在漫才のトレンドともいえる「イケメンがボケ」というパターンのコンビの問題点について見てみよう。ミキとマヂカルラブリーは共に決勝初出場かつイケメンボケのコンビだが、結果には大きな差が出た。ミキは、かまいたちやスーパーマラドーナといった優勝候補を抑えて3位にランクインした。一方、マヂカルラブリーは最下位で、審査員から酷評されたことで逆に注目度が上がっている。

不細工キャラはボケ担当が定番だったが

  漫才はボケとツッコミの掛け合いで見せる芸だ。ボケが笑いを仕掛けて、それに相方が突っ込みを入れることで、客席を沸かせる。従来、不細工キャラはボケを担当することが定番だった。フットボールアワーもユニークこの上ない顔立ちの岩尾望がボケだし、今年優勝したとろサーモンも、俳優としても活躍するイケメンの村田秀亮がツッコミで、不細工眼鏡キャラの久保田かずのぶがボケだ。面白い容姿をした芸人は外見だけで笑いを誘えるから、ボケを担当することが多かった。

  ところが昨今はイケメンのボケが増えている。その代表がチュートリアルの徳井義実であろう。チュートリアルの漫才では、徳井が端正な顔で妄想を語っていき、それに相方がつっこむ。それはシュールで斬新な漫才だった。

 チュートリアルが2006年に『M-1』で優勝したあたりから、イケメンのボケと

お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実(左)と福田充徳=2011年、名古屋市拡大お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実(左)と福田充徳=2011年、名古屋市
いうコンビが台頭するようになってきたと思う。今、ブレイク中のメイプル超合金も体重130キロ女芸人の安藤なつがツッコミ担当で、容姿のいいカズレーザーがボケであることが新鮮だと評される。

  なぜ、漫才において、イケメンのボケが成立するかといえば、お笑いの劇場に通う層の大半は若い女性たちだからだ。女性客はイケメンが突っ込まれるのをみると喜ぶ傾向がある。 ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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