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[7]地震からは逃れられない日本列島

プレート運動でできた列島、世界有数の地震発生地帯

福和 伸夫 名古屋大学減災連携研究センター長・教授

プレートの境界で起きていること

 地球表面を覆っている十数枚のプレートが水平にバラバラに移動することで、プレート相互の境界部では、広がったり、すれ違ったり、縮んだりする。それぞれが、「発散型境界」、「すれ違い型境界」、「収束型境界」と呼ばれる。

 発散型境界は、海洋プレートが生み出されるところで、大洋の中央部に連なる海底山脈の中央海嶺を形成している。中央海嶺は、大西洋中央海嶺からアフリカ南端、インド南端を経て東太平洋海膨へと繋がっている。中央海嶺には,トランスフォーム断層と呼ぶ断裂帯が多数ある。これがすれ違い型境界で、カリフォルニアにあるサンアンドレアス断層もトランスフォーム断層である。

 一方、収束型境界には、大陸プレート同士が衝突して盛り上がる「衝突境界」と、重い海洋プレートが軽い大陸プレートや新しくて軽い海洋プレートの下に沈み込む「沈み込み境界」がある。衝突型境界の典型は、インド・オーストラリアプレートとユーラシアプレートの衝突で盛り上がったヒマラヤ山脈である。太平洋西縁の沈み込み境界では、日本列島を始めとする弧状列島を作っている。日本の場合は、東北日本では北アメリカプレートの下に太平洋プレートが沈み込み、西日本ではユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込んでいる。また、伊豆・小笠原諸島は、古い太平洋プレートが新しいフィリピン海プレートの下に沈み込んでできた火山群島である。

 沈み込み境界では、表面に水分を含んだ海洋プレートがマントル内に潜り込む。水の存在によって周辺のマントルの融点が降下し、ある一定の深さになるとマグマができ、これが上昇して火山を形成する。東北日本に南北に連なる火山や伊豆・小笠原諸島の火山は、太平洋プレートの沈み込みによってできた火山である。

 沈み込む海洋プレートの上には、海の中に居たプランクトンやサンゴの死骸が何千万年もかけて堆積している。海洋プレートが沈み込むときに、この堆積物をひっかき出して陸に付加した場所が付加体である。西日本の太平洋側は四万十帯などの付加体でできており、石灰岩が多く産出される。これからできるのがセメントである。石灰岩は我が国では珍しく豊富な鉱物資源である。プレート運動が構造物を作るコンクリートの原料の石灰岩を生み出し、プレート運動によって生じる地震がコンクリートでできた構造物を壊し、再び土に返らせる。何とも不思議な輪廻を感じる。

日本列島周辺のプレート

拡大中央構造線の位置を示すプレート=長野県伊那市
 日本列島は、プレート運動によってできた大陸縁の島弧であり、収束型境界の沈み込み境界にある。東日本は北アメリカプレート(マイクロプレートとしてはオホーツクプレート)、西日本はユーラシアプレート(マイクロプレートとしてはアムールプレート)という大陸プレート上にある。そこに東日本では太平洋プレート、西日本ではフィリピン海プレートという海洋プレートが沈み込んでいる。太平洋プレートは年間8cm程度の速度で西に、フィリピン海プレートは年間3~4cmの速度で北西に進み、全体として日本列島を東西に圧縮している。その結果、列島の中心が盛り上がり脊梁山脈が形成された。この山に季節風がぶつかることで多くの雨や雪が降る水に恵まれた豊かな国になった。

 太平洋プレートが沈み込む場所には、北から千島海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝があり、フィリピン海プレートが沈み込むところには東から相模トラフ、駿河トラフ、南海トラフ、琉球海溝がある。ちなみに、トラフの語源は家畜用の飼い葉桶で、6000mより浅い海底盆地のことを言い、6000mを超えると海溝と呼ぶ。北アメリカプレートとユーラシアプレートの境界付近には、フォッサマグナと呼ばれる地溝帯があり、地溝帯の西端にある活断層が糸魚川・静岡構造線である。

 我が国の首都・東京は、北アメリカプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込み、さらにその下に太平洋プレートが沈み込むという三重にプレートが重なった場所に位置する。また、伊豆半島は、フィリピン海プレートの下に太平洋プレートが沈み込んでできた伊豆諸島が、フィリピン海プレートの移動と共に本州にぶつかってできた半島である。伊豆半島の衝突によってフィリピン海プレートは、素直に沈み込めなくなり、相模トラフと駿河トラフで、北東方向と北西方向とに分かれて沈み込むことになった。伊豆・箱根の山々はこの衝突ででき、富士山の噴火も衝突による力でできる割れ目で起きる。普段、伊豆・箱根の温泉群や風光明媚な自然を満喫しているが、伊豆・箱根や富士山などの活火山の存在は忘れないでおきたい。

日本列島の周辺で起きる地震

 日本列島は世界有数の変動体にある。このため、日本の国土面積は世界の全陸地面積の400分の1程度でしかないが、世界で起きる地震の10分の1程度が日本周辺で発生している。火山の数も全世界の火山の7%程度である。地震の震源は、 ・・・続きを読む
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筆者

福和 伸夫

福和 伸夫(ふくわ・のぶお) 名古屋大学減災連携研究センター長・教授

1957年に名古屋に生まれ、81年に名古屋大学大学院を修了した後、10年間、民間建設会社にて耐震研究に従事、その後、名古屋大学に異動し、工学部助教授、同先端技術共同研究センター教授、環境学研究科教授を経て、2012年より現職。建築耐震工学や地震工学に関する教育・研究の傍ら、減災活動を実践している。とくに、南海トラフ地震などの巨大災害の軽減のため、地域の産・官・学・民がホンキになり、その総力を結集することで災害を克服するよう、減災連携研究センターの設立、減災館の建設、あいち・なごや強靭化共創センターの創設などに力を注いでいる。

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