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月9はなぜ同じ過ちを繰り返すのか(上)

低視聴率の理由は”若者が恋愛しなくなったから”?  社会学風分析は事実を隠蔽する

杉浦由美子 ノンフィクションライター

  フジテレビの「月9」ドラマの視聴率不振が話題になって久しいが、ここにきてさらに視聴率低迷に拍車がかかっている。「月9」の不振に対して、「若者が恋愛をしなくなったから」といった視聴者の変化を指摘する批評も見受けられるが、それは本当だろうか。

  前クールの月9『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』は最終回が4.6%と記録的な低視聴率で終わった。今クールの『海月姫』は初回が8.6%で、『民衆の敵』の初回の9.0%より低い。さらに、3回目で既に5.9%まで落ちている。

  この視聴率不振の原因はなんなのか。

 

フジテレビのドラマ「海月姫」に蔵之介役で出演している瀬戸康史=2017年8月27日、兵庫県西宮市拡大フジテレビのドラマ「海月姫」に蔵之介役で出演している瀬戸康史=2017年8月27日、兵庫県西宮市
「『民衆の敵』と同じミスがあるんです。主人公たちが行動を始める理由がちゃんと描かれてない。『民衆の敵』では平凡な主婦が選挙に立候補する過程が曖昧だから、視聴者はドラマに入っていけませんでした。『海月姫』は、地味オタク女子が、女装美男子の蔵之介に出会い、変化していきます。この場合、リア充イケメンの蔵之介がなぜヒロインの住む尼~ずたちの家に通い出すか、の理由をちゃんと見せないと物語が動き出しません。原作や映画では尼~ずは奇妙だけど魅力的な集団です。だから、蔵之介は“ヘンな連中だけど、楽しいぞ”と思って尼~ずの元に通いつめます。ところが今回のドラマ版では、尼~ずは暗くてダサいだけ。あんな集団のところに、蔵之介が通うのは不自然なんです。だから視聴者はドラマに入っていけないんですよね」(漫画編集者)

腕のいいスタッフ軍団によるドラマ作り

  ようは、ドラマの作り方に問題があるというわけだ。

  だが、『海月姫』は『民衆の敵』のような脚本の荒さもなく、主演の芳根京子はおとなしそうな雰囲気がオタク女子役にぴったりで、演技力十分。蔵之介を演じる瀬戸康史の女装姿は奇麗かつかっこいい。昨今の月9ドラマ『突然ですが、明日結婚します』(主演:西内まりや)、『貴族探偵』(主演:相葉雅紀)に比べても丁寧に作られている印象を受ける。

  映像制作会社の社員がいう。

  「『民衆の敵』や『貴族探偵』はフジテレビが制作していますが、今回は共同テレビが作っているので、全然ドラマの質は違ってきます。キー局(フジテレビ)の社員というのは、管理的な仕事がメインで、実際の作業が得意ではない人も多いんです。共同テレビは制作会社ですから、若い頃からずっと現場で働いてきた熟練スタッフが揃っているので、ちゃんとしたドラマが作れて当然です」

  腕のいいスタッフが作ったのに、どうして、前クール同様に「主人公たちの行動の理由が見えないから、視聴者がドラマに入っていけない」という残念なドラマになってしまうのか。

『電車男』の成功体験

  『海月姫』の残念さに対して、先ほどとは別の映像制作関係者はいう。

  「『電車男』の女版という説明で企画を通したのでは? 『電車男』は2005年の夏にフジテレビ系で放送し、 ・・・続きを読む
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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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