ツイッターで拡散したセクハラの告発、日本では少ない当事者の訴え
2018年02月15日
ハーヴェイ・ワインスタインは女優やモデルなど複数の女性からハラスメントや暴行行為等で訴えられ、過去に8件の示談に応じていたと報道された。アカデミー賞を主催する米映画芸術科学アカデミー(AMPAS)は10月14日、緊急会合での採決で彼の会員資格を剥奪することを決定し、事実上彼を映画界から追放した。米ニューヨーク市警や英ロンドン市警などが捜査を開始し、彼の関わった作品の公開延期や制作中止などへと広がっていった。
ハリウッドでは役と引き換えに性的関係を要求される「キャスティング(配役)・カウチ(長いす)」(日本でいう「枕営業」)という言葉があり、セクハラを業界ぐるみで黙認する土壌があった。米女優アリッサ・ミラノはこの動きの中で、10月15日にツイッターに書き込む。「セクハラを受けたことのある女性たちが『Me too』と書けば、この問題の大きさをわかってもらえるのではないか」「もしあなたが性的嫌がらせや虐待を受けたら、このツイートに『Me too』とリプライして」。
被害の事実を詳細に告白することはつらいし難しくても、告発するために「Me too」とだけ投稿すれば、それでも十分だと呼びかけたのである。ツイッターによる拡散-運動はたちまち全世界に広がった。米タイム誌の2017年年末恒例の『今年の人』には、セクハラ問題を告発した「沈黙を破った人たち」が選ばれた。
しかし、これが白人セレブ女性たちの一過性のイベントで終わる運動ではないことを指摘したのは、この運動を2007年に始めていた黒人女性のタラナ・バークであった。彼女は青年団体「Just Be Inc」の設立者で、自らも性的被害を受けたことがあった。
バークは、大物プロデューサー(だけ)ではなく、さまざまなありふれた職業の身近な男性たちからの被害を受け声を挙げられない被害者たち、中でも若い黒人女性とつながるために「#Me Too」を作った。当事者から当事者へ、この声が言われ聞き届けられることは、「共感を通したエンパワメント(empowerment through empathy)」を意味し、「あなたはひとりじゃない、傷が癒される日は必ずくる」というメッセージをもつ。声にならない声でも、ただ一言、「Me Too」ということでも意味があるとタラナ・バークは呼びかけていた。
「第三波フェミニズム」は女性間の人種的差異や格差の違いを告発し(クリトリス切除問題、スカーフ問題等での白人女性の運動の押しつけに対し、その文化や文脈の中でしか生きられない状況、スカーフがエスニシティのシンボルの意味や男性文化の中でのカムフラージュとして機能する可能性を示唆)、さまざまな差別の中で性・階級・人種の3つの差異において最底辺にある「貧困黒人女性」の問題を提起した。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください